研究課題/領域番号 |
20K09843
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
秋田 新介 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (00436403)
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研究分担者 |
木村 元子 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00345018)
三川 信之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (40595196)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リンパ浮腫 / 線維化 / 皮下組織 |
研究実績の概要 |
本研究の最終的な目標として、皮膚皮下組織の炎症に伴う不可逆な線維化の先制診断、予防治療の確立を掲げており、典型的な慢性炎症下の組織線維化の進行をきたす疾患としてリンパ浮腫を想定してきた。さらに、本年度は炎症と線維化による創傷治癒過程における瘢痕形成においても近い作用機序が働いていることを確認した。 マウスリンパうっ滞モデルおよび創傷瘢痕モデルを用い、急性期から亜急性期における再疎通の障害が慢性うっ滞、線維化の進行の主体であると考え、リンパ流損傷時の順調な再疎通を示すマウスモデルと、再疎通障害を示すマウスモデルを作成して検証した。生体のICG fluorescent lymphography並びに組織学的にリンパ流と、リンパ管、リンパ節の観察を行い、組織の変性について記録した。リンパ節については、1400m,InGaAsカメラを用いた評価を併用した。 リンパ流はリンパ節の存在部位と関連して再疎通の網を回復するため、リンパ節の血流状態によってリンパの再疎通に差が出ると仮説を立てた。マウスの腹部リンパ節を用いたリンパ節付き皮弁モデルを作成し、その血流安定性、皮弁生着範囲を確認した。さらに、阻血皮弁、鬱血皮弁モデルを作成し、それぞれの血流不全時におけるリンパ節の組織学的変化を記録した。 一連の鬱血、阻血、組織変化を踏まえ、これら線維化活性化状態の血液のCD69-Myl9 systemとのかかわりを検証すべく、実験プロトコールを作成した。 ヒト検体の1000nmを超える領域の近赤外線カメラの使用、CD69-Myl9 systemの活性化の調査については倫理審査を終え、検体の蓄積を行っているが、対照を線維化をきたす疾患に拡張して取り組んでいる。近赤外線カメラについては特に小リンパ節の同定における有用性をこれまで示してきたが、本年度はその正確性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト検体のリンパうっ滞環境における組織学的な変化並びに採血所見における変化について、2020年に社会的状況により、外来診療数の自粛に伴う削減があったため、検体数は計画よりも少ない状況とはなったたことを受け、全体としてやや遅れた状況が2021年度も続いている。。 動物実験においては、2021年度は、新たな所見の蓄積から、対照をリンパの鬱滞のみならず、組織の瘢痕にも拡張したため、当初の計画よりも実験すべき内容が増えたことを受け、全体の進捗としてはやや遅れいている。追加実験は、本研究本来の研究目的を達成し、さらに将来的にリンパ浮腫などの組織の線維化をきたす疾患での臨床応用に役立てるうえで、極めて重要であると考え、期間内に全日程を終える前提で、やや遅れた状態から、研究全体の日程を再計画した。すでに一定の実験結果がが得られつつある。 併せて、近赤外線カメラによる観察を行い、線維化並びにリンパ節所状態を観察する研究を並行して進めている。 これら、研究成果から得られた新たな仮説をも検証しつつ、研究全体の課題の解決に向けて知見が蓄積されてきており、次年度の研究に有益につながっていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立したマウスモデル、並びに新たに確立したマウスmodelについて、組織の阻血と鬱血、リンパ流のシステムの再疎通の有無が、CD69-Myl9 systemといかにかかわっているかを解明する。特に、急性期と慢性期における変化の違いを知ることで、リンパうっ滞疾患などにおける組織の線維化における、バイオマーカーとしての役割を担うことが可能であるかどうかを検証する。 さらに、抗CD69抗体、あるいは抗Myl9抗体がリンパうっ滞の経過に及ぼす影響と、組織の線維化の抑制に有効かどうかを検証する。 動物実験と併せて、ヒト検体においても、既往やリンパうっ滞が始まってからの期間、リンパ浮腫のステージの進行スピードなど、リンパ浮腫進行の活動性と、CD69-Myl9 systemとのかかわりについて検証する。動物実験結果とヒト検体の結果との解釈を統合することで、研究結果をまとめる。 リンパ浮腫を本研究の主体的な対象と想定してきたが、皮膚皮下組織の組織炎症が強い疾患における所見も集まりつつあり、予後や経過を推定するバイオマーカーとなる可能性を考慮し、全身熱傷やケロイドにおける変化についても検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画のやや遅れが生じていることにより、次年度に取り組むべき実験が残っているため、次年度に資金を残しております。また、社会的状況を踏まえ、海外での学会参加を控えた点などもあり、2021年度の支出が少なかった点もあります。この点については2022年度にも社会的状況が不透明ではありますが、今後より積極的な発信に努めてまいりたいと思います。
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