研究課題/領域番号 |
20K09848
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
戸澤 麻美 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教(病院教員) (70635531)
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研究分担者 |
村上 正基 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (20278302)
森 秀樹 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (60325389)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HMGB1 / 創傷治癒 / 糖尿病 / LL37 / 抗菌ペプチド |
研究実績の概要 |
糖尿病性足病変は、易感染性のために複数の細菌叢を形成する。皮膚に常在する抗菌ペプチドであるLL37が糖尿病性足病変の患者に有意に減少していること、LL37が多数の細菌叢からなる感染巣に対して効果的であることがわかってきた。LL37を代表とする抗菌ペプチドは汗腺中に多量に含まれていることから、糖尿病性神経障害による発汗作用の低下が表皮角化細胞の免疫低下昨日をもたらし、易感染性の原因の一つとなっている可能性が推測される。 一方、糖尿病治療薬であるDipeptidyl peptidaseⅣ(DPP-4)阻害薬は、糖尿病患者の創傷治癒を改善することが知られているが、その機序としてプロテアーゼの一種であるDPP-4が細胞内で増加し、細胞内のタンパクであるHMGB1を破壊することで創部の血管新生を阻害していることがわかってきた。一見関連のないこの2つのタンパク(LL37とHMGB1)が糖尿病性足病変においてともに減少しているという事実が、本疾患に対する新規治療法開発の上で重要な因子である、我々はLL37がHMGB1の産生を誘導し、さらにLL37により細胞外に誘導された大量のHMGB1は、LL37と複合体を作って細胞を再刺激することで、それぞれ単独ではみられないTLR3のmRNAを著明に誘導することを発見した。さらに還元型HMGB1やその構成成分であるHMGB1-Abox複合体が単層培養角化細胞において創傷治癒を促進する作用をもつことを発見している。本研究ではHMGB1およびLL37含有軟膏による糖尿病性足病変(潰瘍)に対する治療薬の開発を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
正常表皮角化細胞に対する抗菌ペプチドおよびHMGB1複合体軟膏の作成と評価を行うために、①正常ヒト角化細胞を用いた単層培養細胞、三次元培養表皮に対し、皮膚科領域細菌群(Group B Streptococcus, Group A Streptococcus, S.aureus, MRSA)による創傷遅延モデルの作成を試みた。その後LL37, Dermocidinを馴染めとして皮膚に発現する抗菌ペプチド群、HMGB1, HMGB1-Abox)を各々①で構築したシステムに作用させ、創傷遅延の改善と炎症性サイトカインの誘導あまたは抑制について評価を行った。また、三次元培養皮膚による各層におけるHMGB1群の発現を免疫蛍光染色、qRT-PCRを用いて観察してきた。 糖尿病性マウスおよびTLR3ノックアウトマウスの背部または耳介に、黄色ブドウ吸引を含めた皮膚科領域筋群(静菌・死菌)を局注し皮膚潰瘍を形成する。その後皮膚抗菌ペプチド群およびHMGB1群を単独または複合して作用させ、これらの膿瘍の改善または拡大を評価検討することを昨年度終了予定であったが、今年度も引き続き行う予定となり、やや遅れを認めている。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病マウスおよびTLR3ノックアウトマウスに作成した潰瘍に抗菌ペプチド群およびHMGB1群を単独または複合して外用する結果が出たら各種創傷モデル(感染有群、無群)を作成し、創傷治癒効果の高い順に皮膚抗菌ペプチドおよびHMGB1含有軟膏を数種類作成し、これによる炎症制御を比較検討する予定である。その後倫理委員会の承認が得られれば糖尿病性潰瘍に対する治療を試み、潰瘍サイズの形態学的変化、病理組織観察、電子顕微鏡観察などのを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった抗体がコロナの関係で納入がおくれたため
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