研究課題/領域番号 |
20K09849
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
矢吹 雄一郎 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (30610357)
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研究分担者 |
北山 晋也 横浜市立大学, 医学部, 助教 (30714258)
足立 英子 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (30747580)
前川 二郎 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70244449)
小池 智之 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 助教 (80723345)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リンパ浮腫 / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
2020年度は新型コロナウィルス感染症の影響で、計画していた動物実験や臨床検体を用いた研究が施行困難であった。そのため、すでに採得している臨床データを用いた解析とその研究を行った。具体的には、横浜市立大学附属病院で治療しているリンパ浮腫患者の一般統計学的項目や病歴、発症年齢、罹患期間、リンパ機能を調査した。リンパ機能はSPECT-CTリンパシンチグラフィとインドシアニングリーン蛍光リンパ管造影を用いた。 横浜市立大学附属病院ではSPECT-CTリンパシンチグラフィはリンパ浮腫の診断を目的として多くの症例で撮影しているが、放射性トレーサーや核種投与量、画像構成方法など撮影条件が均一でなく、症例間での定量的な解析が困難であった。そのため、撮影された画像を定量的に解析することで最適な撮影条件の検討を行った。また、インドシアニングリーン蛍光リンパ管造影においてはリンパ管静脈側端吻合術の術中および術後に施行している。そして、吻合部開存性によって術後の造影パターンが変化しており、結果的に吻合部開存率と経時的な変化が評価可能であった。これらの研究成果はそれぞれ第64回日本形成外科学会学術集会と第47回マイクロサージャリー学会学術集会において発表した。 なお、これらの研究成果は研究計画している組織学的解析、とくにヒト検体における免疫組織学的解析(LYVE-1抗体、抗α平滑筋抗体、アンジオテンシンII受容体、ATRAP、IL-6、TNF-αなど)との相関性を評価し、リンパ浮腫の新たな臨床的分類法の作成を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は新型コロナウィルス感染症の影響で、計画していた動物実験や臨床検体を用いた研究が施行困難であった。 動物実験においては、研究施行体制に影響が生じた。感染拡大防止措置として、研究室の使用や対面でのミーティングなどを中止中断した期間があった。そのため、計画していた研究が施行できなかった。 臨床検体を用いた研究においては、検体の供与において影響が生じた。検体はリンパ浮腫の症例に対しリンパ管静脈吻合術を行う際に供与を受けることが主である。しかしながら、感染拡大防止措置としてリンパ管静脈吻合術を始めとした待機可能手術の中止中断を行った期間があった。その期間外においても、患者側からの入院や手術予定中止中断の要望が重なり、検体の供与を受けることが困難な状況であった。 これらの感染拡大防止措置が緩和された状況においては、前述の通り臨床データを用いた臨床研究を中心として行うことにより研究の推進を図った。それにより、計画していた研究のうち、一部を施行できているが、全体としては当初の研究計画と比較し遅れている状況にあると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
前項に挙げた通り、動物実験と臨床検体を用いた研究において遅延を生じている。しかし、いずれも研究計画の倫理審査など研究体制と研究環境の整備は完了している。今後の社会情勢、および横浜市立大学附属病院と横浜市立大学の感染拡大防止措置の状況に大きく左右されるのが前提ではあるが、当初初年度に施行を計画していた実験と研究を行う。具体的には、①リンパ浮腫モデルマウスの作成とその検証、②ヒト検体の解析を行う。 リンパ浮腫モデルの作成とその検証においては、リンパ浮腫モデルマウスを作成し、インドシアニングリーン蛍光リンパ管造影を用いた定性的な評価と、免疫組織学的な解析を行う。マウス片側後肢において大腿基部全周性切開や鼡径膝窩リンパ節郭清、大腿動静脈伴走リンパ管の結紮(顕微鏡下)、切開した皮膚は内反縫合を行い、リンパ浮腫モデルを作成する。経時的にサンプルを採取し、それらの組織学的変化を比較検討する。検討項目は、HE染色、EVG染色に加え、免疫組織学的解析(LYVE-1抗体、抗α平滑筋抗体、アンジオテンシンII受容体、ATRAP,IL-6、TNF-αなど)を行うことを計画している。ヒト検体の解析においては、原発性リンパ浮腫患者、続発性リンパ浮腫患者からリンパ管を中心とした組織を採取し、正常なものと比較検討する。 これらの実験と研究は、施行体制のみならず手技的にも実施可能であることが確認できている。さらに、研究計画として挙げていた臨床データの評価においても、その評価方法は2020年度に行った研究成果に基づいて集積することが可能であると判断される。これらにより、次年度以降は推進性を持って研究することが可能であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、計画していた実験及び研究に遅延が生じている。そのため、使用を見込んでいた消耗品などを購入しておらず、消耗品費を中心に次年度使用額が生じた。 さらに、新型コロナウィルス感染症に対する対策として、学術集会への参加制限があるため、それらに伴う旅費においても見込んでいた金額を使用していない。具体的には、2020年度においては研究成果の報告と情報の収集を目的として国際リンパ浮腫フレームワーク(デンマーク)に参加予定であった。しかし、参加困難であったために、計上していた外国旅費は使用しておらず、次年度使用額が生じた。 ただし、国内学会においてはオンラインでの開催を予定している学術集会も少なくない。そのため、計上している外国旅費の一部は国内旅費として使用し、国内において研究成果の発表や情報の収集を行っていく。 また、動物実験とヒト検体を用いた研究においては、2020年度に施行困難であったものを次年度に行うことを計画している。つまり、2020年度に計上した消耗品費は次年度にそのまま使用する計画にある。
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