研究課題/領域番号 |
20K09857
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所) |
研究代表者 |
小林 眞司 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 部長 (90464536)
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研究分担者 |
安村 和則 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 医長 (40351621)
田中 祐吉 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 臨床研究所長 (50420691)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多血小板血漿 / 多血小板フィブリン / 唇顎口蓋裂 / 骨形成 |
研究実績の概要 |
歯肉骨膜形成術(gingivoperiosteoplasty:GPP)は、口唇口蓋裂の顎裂部(歯ぐき)を閉鎖する手術である。この手術を生後6ヶ月前後に口唇形成術と同時に行うことで、顎裂部の骨が形成され、その後(6~10才)の顎裂部骨移植術(secondary bone graft:SBG)が必要なくなる。当科では、1999年から現在までGPPが合併症なく行われているが、顎裂部の骨形成が十分でない症例もあり、SBGを必要としない骨形成が十分に認められた症例は片側例で60-65%程度であった。一方、多血小板血漿/フィブリン(platelet rich plasma/ fibrin:PRP/F)は歯科領域、美容外科、創傷治癒などで幅広く応用されており、PRP/F中に含まれる血小板は、複数の成長因子を放出し骨芽細胞の増殖、毛細血管の新生、骨造成および軟組織の治癒に促進的役割を果たすとの報告がある。本研究は、PRP/Fを移植し、再現性よく骨形成を促進させるとともに、その作用機序を解明することを目的とする。 臨床的には再生医療等安全性確保法下に「PRP/Fによる再生医療」が合併症なく安全に行われている。本年度は、5年前にPRP/Fを移植した片側唇顎裂患児に対して、顎裂部のCT評価を行った。非披裂側(健側)に対する披裂側(患側)の骨形成率の割合はPRF移植群が他群(非移植群・PRP移植群)と比較して統計学上有意に高いことからPRFの有効性が示された。 基礎的には、In vivoでT細胞機能欠如ラットの顎裂部へPRPの移植を行うことに成功した。非移植群、PRP移植群、PRP+新規徐放化材料移植群に分けられ、移植3カ月後に顎裂部の状態を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PRP/Fに関しては、臨床・基礎(in vitro/in vivo)ともにおおむね順調である。臨床的には、再生医療等安全性確保法下にPRFの移植を継続する予定である。基礎的には、マイクロCTを用いてPRP移植を行ったT細胞機能欠如ラットの顎裂部の検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
臨床的にはPRFが有効であった。PRPはin vitroでは骨への促進作用が認められたが、臨床的には有意性を見出せなかった。この原因は、PRPが移植後すぐに流出して長時間移植部位に留まらないためであり、PRPを移植部位になるべく長期間留まらせPRPの効果を持続させる必要があると考えられた。これを解決するためにPRPの徐放化システムの確立は急務であると思われ、新規徐放化材料にPRPを含有させた移植実験を継続する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、臨床面では手術が中止または延期になり、PRP中に含まれるサイトカイン濃度などの一部の定量ができず、基礎的には動物実験の一部が延期されたため。本年度は、引き続きヒトPRPおよびPPP(乏血小板血漿)中に含まれるサイトカイン濃度の定量を行うとともに、T細胞機能欠如ラットの顎裂部へ、新規徐放化材料にPRPを含有させた移植実験を計画している。
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