研究実績の概要 |
1.足趾に付着する腱におけるAGEの局在の研究 足趾潰瘍により断端形成術を施行した64 名64趾(男性50、女性14、平均年齢69.4歳、糖尿病患者48名)に対し、抗AGE抗体(ab23733 Abcam, Cambridge, UK)を用いた足趾腱の免疫組織化学染色を施行し、52趾健束の間の結合組織内に存在する腱の栄養血管内皮細胞にAGEの沈着を確認した。AGE陽性患者の割合は糖尿病患者と非糖尿病患者ではほぼ同じであったが、69歳以下では糖尿病患者の方が非糖尿病患者より陽性率が高い傾向にあった(p=0.5153)。これまで腱の脆弱性は腱への直接的なAGEの蓄積が原因と言われてきたが、本研究により、AGEによる微小血管障害が原因の一つであることが示唆された。 2.糖尿病性足潰瘍患者の足趾標本における細菌の感染経路の解明 骨髄炎を合併した12名の糖尿病性足潰瘍患者(男性8、女性4、平均年齢69歳)から、足趾切断術の際に摘出した15趾について研究した。13趾でグラム陽性染色陽性であり全例で組織培養でもグラム陽性菌を確認した。6趾でグラム陰性染色陽性であったが、組織培養でグラム陰性菌を確認したのは4趾であった。 グラム染色を確認できた部位は骨髄9趾、軟部組織14趾、腱12趾、骨端11趾、腱付着部10趾、骨幹2趾であった。骨端部は成長期の急性化膿性骨髄炎の好発部位として知られているが、成長軟骨板の消失した成人ではどこにでも骨髄炎を生じると考えられている。我々の研究において骨幹部でグラム染色陽性だったのは2趾のみであり、腱を伝ってきた細菌が付着部から骨端部から骨髄内へ侵入することが示唆された。 2つの研究からAGEの微小循環障害による腱の脆弱性により細菌感染が生じやすくなり、腱をつたって運ばれた細菌が付着部である骨端部から骨髄内へ侵入し骨髄炎を生じることが強く示唆された。
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