研究実績の概要 |
本研究では、SLRPの一つであるオステオアドへリン (Osad)について、骨組織と脂肪組織の異種組織間の機能的なクロストークの詳細な分子機構を調べ、この分子が骨組織から脂肪組織へのシグナル分子として脂肪細胞分化や脂質代謝に及ぼす作用とその機構を明らかにすることを目的とした。まず、組換えOsad発現プラスミドを作成し293細胞にトランスフェクションした。Osadの脂肪細胞分化への影響を検討した。培養上清の添加によりOil RedOで染色された細胞が増加し、脂肪細胞分化の促進効果が明らかになった。同時にsclerostinを加えたところ、Oil RedO陽性細胞数はさらに増加した。これらの細胞よりトータルRNAを採取し、脂肪細胞分化、脂肪酸の取り込み・輸送・酸化など脂質代謝に関わる遺伝子発現を調べたところ、PPARγ,C/EBP-α, LPL (1ipoprotein 1ipase),FAT (fatty acid transporter)などの発現量の増加が明らかになった。この結果よりOsadは脂肪細胞分化のみならず、脂肪酸合成といった脂質代謝系に対する効果も示された。Osadにはロイシンリッチリピートドメイン,硫酸化チロシンドメインなど複数のドメイン構造が明らかになっている。そこで、Osadの種々の欠失変異体を作成し検討を行った。Osadのロイシンリッチリピートドメインを失わせると脂肪細胞分化の促進作用が喪失した。また、bFGF は静止期の血管平滑筋細胞を特異的に刺激し増殖と脱分化を誘導するのみならず、脂肪細胞分化にも影響を及ぼすことが示された。ミオシン軽鎖の関与も明らかになった。本年度までに得られた結果から、オステオアドへリンのロイシンリッチリピートを含む特徴的なドメインが脂肪細胞分化と脂肪組織における脂質代謝に作用することが明らかになった。
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