研究実績の概要 |
GABA受容体は5つのsubunitからなる5量体として形成される。GABA受容体にはクロライドイオンチャンネル(Cl-)型およびGタンパク質結合型があるが、Cl-型GABA受容体の破骨細胞分化における発現や機能の報告はない。そこでまず破骨細胞におけるCl-型GABA受容体subunitの発現をreal-time PCRにより調べた。骨髄細胞から分化させた破骨細胞では、α4, 5, 6,γ1,2およびρ2が検出されたが、βsubunitは検出されなかった。αやγsubunitは5量体形成にβsubunitが必要であることから、破骨細胞ではρ2 subunitによりCl-型GABA受容体が形成されると推測された。そこでGABA受容体ρ2subunit (Gabrr2)に注目して研究を進めた。Gabrr2の破骨細胞分化における機能を調べるためにGabrr2アゴニストTACA処理実験およびretrovirusを用いたGabrr2の過剰発現実験を行った。その結果、両実験ともにTRAP染色の低下がみられ、破骨細胞分化マーカーTRAP, Cathepsin K, Nfatc1遺伝子発現の低下がみられた。逆にshRNAによりGabrr2を機能阻害すると、TRAP染色の亢進および破骨細胞分化マーカー遺伝子の発現上昇が認められた。さらにGabrr2機能阻害による破骨細胞分化マーカー遺伝子発現の上昇は、calcineurin inhibitorであるFK506によって阻害されましたが、CamK inhibitorであるKN-93によっては阻害されなかった。以上の結果から、Gabrr2は、calcineurinを介したシグナル伝達経路の抑制により、破骨細胞分化を抑制する機能を持つことが判明した。
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