研究課題
口腔領域においてエナメル上皮細胞には他のさまざまなイオンチャネルやトランスポーターの発現が報告されている。本研究では歯の形成過程における亜鉛シグナルに着目し、本年度は歯胚の発生から歯冠および歯根形成完了までの亜鉛トランスポーター発現細胞の時空間的推移の全容把握を目的とした。歯の形成過程における亜鉛トランスポーター陽性細胞出現時期および組織での局在について明らかにするため、zip10-EGFP-Ires-Cre-ERT2ノックインマウスの歯胚形成期から歯根完成期までの各発達時期ごとにサンプルを採取し組織学的解析を行った。本研究では主に下顎第一大臼歯および第二大臼歯を観察対象とした。歯胚形成期は歯胚の形態学的特徴(蕾状期、帽状期、鐘状期)を参考にし、胎児期となるため日齢は交配させた翌日の朝にプラグチェックを行い、胎生14.5(帽状期)および18.5日(鍾状期)の胎児を使用した。歯冠および歯根形成期はそれぞれ生後7日および14日の新生仔の下顎骨を摘出した。各形成段階ごとにそれぞれ標本作製を行い組織学的解析を行った。蛍光顕微鏡下においてEGFP陽性細胞を亜鉛トランスポーター陽性細胞とし歯胚、歯冠および歯根部での局在部位の把握を行った。本結果は歯の発生過程において亜鉛シグナルの関与する時期や歯のどの構成成分の組織発生に関わるかをより詳細に想定することが可能となり次年度以降の研究内容につながる重要な検証である。
3: やや遅れている
zip10floxマウスの凍結精子からの個体復元を行ったため進捗状況に若干の遅れが生じている。現在胚移植されたメスマウスからの個体復元に成功し近々実験に使用可能となる予定である。
令和3年度は以下の研究を遂行する。①亜鉛トランスポーター遺伝子欠損による歯の発生過程への影響の実証:Zip10floxマウスにて時期特異的に亜鉛トランスポーターをノックアウトした場合歯胚の発生および歯冠・歯根形成に何らかの障害が生じるかどうかについて、各歯の発生過程において標本作製を行い病理組織学的に検討を行う。またin vitroによる検討として、器官原器再構成法によりZip10floxマウスの歯胚から採取した細胞を用いて器官培養を行い生体外で人工歯胚を作製する。さらに作製した人工歯胚を成体マウスの抜歯窩に移植し生体内で歯の再生が起こるか検討する。②歯の形成過程における亜鉛トランスポーター発現細胞内での亜鉛シグナル応答分子の探索亜鉛トランスポーター発現細胞が出現する時期の歯胚または歯牙を顎骨内から摘出する。採取した細胞の次世代シークエンスを用いた遺伝子発現解析とプロモーター解析により、歯の形成過程における亜鉛シグナル応答分子の全体像を明らかにする。
本年度は使用予定マウスの準備状況により研究進捗が少々遅れその分繰り越しとなった。次年度は使用可能となるためそのマウスを使用した解析および計画予定の研究を進める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
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