研究実績の概要 |
CRISPR/Cas9 systemで作成したOpn3-KO褐色脂肪細胞から、クローン細胞株を9種類作成した。これらのクローン株の脂肪細胞分化能を調べたところ、それぞれのクローン株で分化能に違いが見られた。さらに、褐色脂肪細胞および脂肪細胞マーカーであるucp1, AP2, PGC1α遺伝子の発現にも違いが見られた。褐色脂肪組織はヘテロな細胞集団であるため、各クローン株で分化能が異なるのはリーズナブルであると考えられた。しかし、より生体内に近い状態での褐色脂肪組織におけるOpn3の役割を調べるためにはクローン株を用いた実験よりもヘテロな細胞集団を用いた実験が望ましいと考えられた。そのため、3種類のヘテロな細胞集団(sg1-, sg2-, sg3-Opn3-KO cell )を用いて、褐色脂肪細胞におけるOpn3の機能を調べるために糖取り込み測定を行った。その結果、Opn3をノックアウトした褐色脂肪細胞では定常状態での糖取り込みが減少していた。一方、インスリン依存性の糖取り込みには変化が見られなかった。さらに、脂肪溶解実験を行ったところ、Opn3をノックアウトした細胞では脂肪溶解能が低下していた。このことから、Opn3は褐色脂肪細胞において糖取り込みと脂肪溶解を促進しており、糖代謝および脂肪代謝を活性化させてミトコンドリアでのエネルギー産生能を増強している可能性が示唆された。今後はミトコンドリア数の測定およびミトコンドリアの活性測定を行う。さらに、Opn3-KO細胞にOpn3を過剰発現させてレスキュー実験を行うための、Opn3-KO-Opn3-OE細胞のStable株を作成した。今後はこの細胞を用いて褐色脂肪細胞マーカー遺伝子およびタンパクの発現検討および機能解析実験を行う。
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