閉経後の女性は、骨密度の低下による骨折リスクや体重の増加による糖尿病や心血管障害のほか、乳がんなど女性特有のがんの発症リスクの上昇が報告されている。エストロゲン欠乏による骨密度の低下と体重増加は、各臓器で共通の反応を惹起することが考えられる。NIKの遺伝的機能欠失型変異によって非古典的経路が抑制されたalymphoplasia(aly/aly)マウスでは骨吸収が抑制されて大理石骨病を呈する。また、NIKの阻害剤Cpd33を卵巣摘出マウスに投与すると、骨量の減少だけでなく、内臓脂肪の増加による体重増加も抑制されることを見出した。それゆえ、エストロゲン欠乏による骨量減少と体重増加に、NIKが『共通制御分子』であることを想定した。そこで、8週齢の野生型およびaly/alyマウスを偽手術(sham)群、および卵巣摘出術(OVX)群に分け、高脂肪食(HFD)で12週間飼育したところ、aly/alyマウスでは、野生型マウスと比較してOVXによる内臓脂肪および肝臓の重量の顕著な増加が抑制された。今回、さらに肝臓における脂質代謝関連遺伝子(FAT/CD36、FAS、およびSREBP1c)のmRNA発現解析を行った。その結果、HFDで飼育した野生型(WT)に比べ、HFD飼育のaly/aly マウスではCd36の発現が低いことから、aly/aly マウスの肝臓では脂肪酸の転位が遅くなっていることが示唆された。WTにおけるOVXとshamにおいて、Fas と Srebp1cの発現レベルは前者において高くなっていた。 しかしながら、aly/aly マウスのOVXにおけるFasおよびSrebp1c の発現レベルは、WTのそれに比べて有意に低かった。すなわち、FasおよびSrebp1c の発現レベルの低さがaly/aly マウスの肝臓への脂質蓄積を阻害している要因であることが示唆された。
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