Runx2は骨芽細胞分化および軟骨細胞後期分化に必須な転写因子である。Runx2-/-マウス由来初代軟骨細胞およびRunx2-/-p53-/-マウス由来軟骨細胞株にRunx2を導入、Runx2のターゲット遺伝子をマイクロアレイで探索、Nopp140を同定した。Nopp140タンパク質は、折りたたまれた立体構造を取らないintrinsically disordered proteins (IDPs)の典型例である。IDPsはDNA、RNA、タンパク質と相互作用できるいくつかのモチーフを持っている。核小体、カハール体(small nuclear RNAに富んだ核内小器官)、細胞質を移動し、リボソーム合成への関与が報告されている。Nopp140の軟骨細胞における機能を明らかにするため、Co2a1プロモーターを用い、軟骨細胞特異的にNopp140を発現させたトランスジェニックマウスを作製した。胎生18.5日の脛骨のHE染色では成長板は縦横共に短く、特に静止軟骨細胞層と増殖軟骨細胞層が長軸方向に短縮していた。静止軟骨細胞層では、細胞形態が野生型マウスよりやや大きい細胞が多数認められた。増殖軟骨細胞層の柱状構造は乱れ、柱状構造を取らない軽度肥大化した細胞が増殖軟骨細胞層に見られた。また、成長板全体に細胞密度が低下していた。したがって、Nopp140 tgマウスでは軟骨細胞の増殖は低下し、肥大化は促進されていると考えられた。また、胎生15.5日の頭蓋冠と四肢からRNAを抽出、real-time RT-PCRでNopp140の発現を調べた。頭蓋冠、軟骨共に発現が認められたが、特に頭蓋冠での発現が強かった。さらに、Nopp140 生理的機能を調べるために、CRISPR/Cas9 のシステムを用いてNopp140のgermline knockoutマウス及びNopp140 floxマウスを作製した。
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