研究課題
放射線化学療法を受ける頭頸部がん患者の口腔内にはしばしば潰瘍性口内炎が発症し激痛をもたらす。さらに唾液腺萎縮による口腔乾燥も併発するため、会話や食事などの口腔機能が困難になることから、臨床上大きな問題となっている。以前、動物実験にて唾液分泌低下による潰瘍性口内炎の増悪や治癒の延長には、口腔乾燥による口腔細菌数増加が強く関与する可能性を報告したが、口腔細菌叢バランス失調の可能性も考えられる。そこで本研究は、口腔乾燥による口腔細菌叢バランスの変化を明らかにし、その変化が潰瘍性口内炎の治癒過程や疼痛にどの程度影響するのか解明することを目的とした。唾液腺摘出による口腔乾燥モデルラットにおいて、唾液腺摘出2週間後に酢酸を用いて潰瘍性口内炎を作製したところ、非摘出群と比較して口内炎の重篤度は増悪しその治癒期間も延長していた。口内炎部の細菌コロニー数も口腔乾燥モデルで増加した。口腔粘膜から得た口腔細菌の16S リボソーム(r) RNA 系統解析を行ったところ、唾液腺摘出1週目よりFirmicutes門の細菌割合が増加し、2週目よりBacteroidetes門の増加が認められた。一方で、Proteobacteria門は唾液腺摘出により一度低下するが、徐々に増加し、摘出4週目では摘出前のレベルに回復していた。また、唾液腺摘出により口腔粘膜における機械逃避閾値の変化は認められなかったが、口内炎部では共に閾値が低下し機械アロディニアの発症が認められた。口腔乾燥による口腔細菌叢のバランス変化は、潰瘍性口内炎の程度や治癒に影響する可能性が示された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Plos One
巻: NA ページ: NA
Neuroscience
巻: 22 ページ: 60-72
10.1016/j.neuroscience.2023.03.018