研究課題/領域番号 |
20K09895
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
阿部 伸一 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (40256300)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 筋腱接合部 / Sox9 / 筋付着部 |
研究実績の概要 |
本年度は、筋と骨をつなぐ腱の再生という見地から、筋-腱-骨複合体の維持機構を考察していった。研究材料は、6週齢のC57BL/6Jマウスを用いた。運動機能の回復を確認するために関心領域をアキレス腱として、メスにて損傷を与えた。マウスは、疑似オペであるSham群、損傷後1週群(POW1)、2週群(POW2)、4週群(POW4)の各4ステージを設け、各種検索を行った。まず初めに生理学的試験の結果、腱損傷により、運動器の機能がPOW1で低下するが、POW4では機能が回復することが明らかとなった。次に組織学的検索を行った結果、POW1では腱組織の連続性を欠いたが、POW2では腱再生において重要な役割を示す腱外側部分のepitenon領域の形成が認められた。しかしながら形態学的には、正常組織と同様な形態まで再生しないことが示された。次に、RT-PCRを行った結果、腱再生に重要なα-SMA,POSTNと共にSox9の発現もPOW2で特に有意な増加を示した。この事は、epitenon領域の再生時期とも一致した。さらに免疫組織学的染色の結果、POW2においてepitenon領域から流れ込むようにSox9が損傷部位に集積することが明らかとなった。次に、Sox9‐CreERT2;dTomatoマウスを作成し、アキレス腱損傷前にタモキシフェンを投与したPre群と、損傷後にタモキシフェンを投与したPost群を比較した。損傷部に集積する細胞は、Post群の方が有意に多いことが明らかとなった。今回の研究より、損傷部にはSox9陽性細胞の集積がみられ、機能回復に Sox9が関与していることが示唆された。また、損傷部に集積するSox9陽性細胞は、損傷後に集積してくる幹細胞がSox9にスイッチングすることで腱再生に関与していることが、細胞系譜解析により明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年に計画していた研究計画は、実績の概要に記載の通り研究結果が出て、論文としてまとめることが出来たため、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、筋腱接合部の形態形成過程においてMyostatinがどのように制御に関わり、両者の連結を強固にしているかという点に研究目的の焦点を絞り、研究を行う。 研究方法としては、筋に連結する腱の発生をinvitroの環境にて明らかにするために生体内を模した細胞積層シートを作成する。C2C12のみを培養しコンフルエントに達した筋芽細胞シート対し、筋芽細胞シートのみ:Myoblast sheet(C2C12)、コラーゲンGelを積層したもの:Collagen gel/Myoblast sheet(C2C12-Gel)、NIH3T3を混和したコラーゲンGelを積層したもの: Collagen gel+NIH3T3 cells/Myoblast sheet(C2C12-Gel 3T3)、の3タイプのCell sheetを作製し、Myostatin添加群と非添加群を比較検討する。続いてin vivoの環境においても筋に連結する腱の発生を明らかにするためにアキレス腱損傷モデルを作成している。筋に接している腱の再生にはMyostatinが必要ではないかと仮説を立て、筋内腱を含めたアキレス腱を取り出したもの、筋内腱を含めないでアキレス腱を取り出したものそれぞれの群をリアルタイムPCRにて解析する。
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