令和3年度の研究において、GD1aが欠損しているGM2/GD2合成酵素遺伝子ノックアウト(GM2/GD2S KO)マウスより分離された骨髄細胞を骨芽細胞へ分化誘導した結果、その細胞の増殖能は、野生型マウス由来の細胞より低下することが示された。そこで、GD1aが欠損しているGM2/GD2S KOマウスにおける骨代謝への影響を検討した。まず、microCTを用いて、骨量を解析した結果、野生型マウスとGM2/GD2S KOマウスの間で、有意な差は認められなかった。次に、骨形成能を評価するために、大腿骨海綿骨における組織学的解析を行った。その結果、大腿骨海綿骨における骨芽細胞数が、野生型マウスと比較して、GM2/GD2S KOマウスで有意に減少していた。また、カルセイン二重標識を用いた解析により、GM2/GD2S KOマウスで骨形成能の低下が認められた。一方、野生型マウスとGM2/GD2S KOマウスの間で、骨吸収能に有意な差は認められなかった。 次に、GM2/GD2S KOによる骨芽細胞におけるスフィンゴ糖脂質の発現パターンの変化を検討した。その結果、野生型マウス由来の骨芽細胞では、GM3およびGD1aの発現が認められた。一方、GM2/GD2S KOマウス由来の骨芽細胞では、GD1aの発現の消失およびGM3の発現の上昇が認められた。本研究において、GM2/GD2Sが欠損した骨芽細胞では増殖が抑制され、その結果、骨形成の低下が認められた。しかし、この骨芽細胞の増殖の抑制がGD1aの消失によるものなのか、また、GM3の発現上昇によるものか不明であり、今後検討が必要である。 以上の結果より、スフィンゴ糖脂質の発現の変化が、骨芽細胞の増殖に影響を与えることが明らかになり、スフィンゴ糖脂質を標的とすることで、骨形成を促進させることができる可能性が示唆された。
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