研究課題/領域番号 |
20K09901
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
船戸 紀子 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 准教授 (10376767)
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研究分担者 |
柴田 俊一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80187400)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | TBX1 / 頭蓋底軟骨結合 / microRNA / 軟骨細胞 |
研究実績の概要 |
頭蓋顎顔面に骨格的な問題がある場合、咬合獲得のためには時間をかけた治療が必要である。頭蓋顎顔面の形態形成には、頭蓋底軟骨結合の発生も影響を与えるが、その重要性にも関わらず、どのような分子メカニズムで頭蓋底軟骨結合の発生が制御されているのか未解決のまま残されている。 申請者らは、頭蓋底軟骨結合の発生におけるTBX1の役割を解明するため、軟骨結合におけるTBX1の発現および転写制御ネットワークを解析した。様々なTbx1コンディショナルノックアウトマウス等を用いて、頭蓋底軟骨結合の表現型解析を行ったところ、TBX1は頭蓋底中胚葉由来の軟骨に発現し、蝶後頭軟骨結合の正常な発生に必須であることが分かった。また、頭蓋底軟骨結合の異常に関連した疾患遺伝子のパスウェイ解析、プロモーター解析、組織免疫染色により、TBX1がRUNX2の転写活性を抑制してRUNX2下流シグナルを調節することが明らかとなった。以上の結果より、軟骨細胞の分化に関わるRUNX2の転写活性およびその標的遺伝子の転写制御を通じて、TBX1が頭蓋底軟骨結合の軟骨細胞分化を制御している可能性がある。これらの結果についてまとめ、論文を発表した(Funato N et al., Journal of Dental Research, 2020)。また、本研究課題に関連した頭蓋底軟骨結合の発生異常についてもまとめ、Reviewを出版した(Funato N et al., Frontiers in Cell and Developmental Biology, 2020)。 一方、TBX1は口蓋裂の発生にも関与する。そこで、発生過程の口蓋上皮においてTBX1の分子機能を明らかにするため、TBX1が口蓋突起で転写制御するmicroRNA群を探索し、新たに同定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定している実験テーマ2つのうち、1つについて、論文を2報発表した。投稿論文が掲載されたJournal Dental Research は、歯科全体をカバーする査読付き医学雑誌の中で最も評価が高い雑誌の1つである。また、本研究課題に関連したReviewも発表した。学会発表も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
口蓋においては、Tbx1の発現パターンとTbx1遺伝子改変マウス口蓋組織の観察から、TBX1が口蓋突起粘膜上皮の増殖や極性に関与することを報告している(Funato et al., Hum Mol Genet, 2012)。発生過程の口蓋上皮においてTBX1の分子機能を明らかにするため、TBX1が口蓋突起で転写制御するmicroRNA群を探索し、新たに同定している。今後、本テーマについて研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に、必要な消耗品については残額以上のまとまった金額での請求が必要になったため、次年度の研究費と合わせての請求となった。
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