本研究では新規B7様分子であるILDR2の生理的意義を明らかにすることを目的として、免疫系における発現様式や機能解析研究を行うこととした。免疫系における膜貫通型ILDR2の遺伝子発現プロファイルをRT-PCR法にて調べたところ、抗原提示細胞(B細胞、樹状細胞)およびミエロイド系細胞において発現することが示唆された。機能研究を行うためILDR2ペプチドを用いたウサギポリクローナル抗体を取得し、western blotにより細胞内ILDR2を検出できたが、フローサイトメトリーによる細胞表面上のILDR2発現を検出できなかった。また、J558L/flagタグ-マウスILDR2を作製し、ラットに免疫してマウスILDR2特異的モノクローナル抗体の取得を試みたが、うまくいかなった。ILDR2はマウスとヒトあるいはラットでは99%が一致するほど、種を超えて高度に保存されたタンパク質であることがわかり、モノクローナル抗体を作製することが非常に難しいことが判明したため、自己タンパク質に対して特異的モノクローナル抗体を取得できるとされる別の方法を試みた。ILDR2の細胞外ドメインおよび破傷風菌毒素(TT)に対する2種類のT細胞エピトープからなるflagHisタグ融合タンパクを抗原とした。J558L表面にILDR2-TTの発現が確認できなかったため、ILDR2-TT-flagHisタンパク精製を行った。最終年度ではExpi293細胞を用いたタンパク質発現系を用いて抗原調製が完了し、マウスへの免疫を行ったところで、本研究期間内には目的とするモノクローナル抗体は得られなかったが、今後のモノクローナル抗体取得に期待したい。
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