研究課題/領域番号 |
20K09903
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
土門 久哲 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00594350)
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研究分担者 |
寺尾 豊 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50397717)
前川 知樹 新潟大学, 医歯学系, 研究教授 (50625168)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 誤嚥性肺炎 / 肺炎球菌 / マクロライド / Pneumonia-omics解析 / プロテアーゼ |
研究実績の概要 |
誤嚥性肺炎等の肺炎は,薬剤耐性菌の増加と高齢社会の到来で増加・難治化・重症化している.申請者は,細菌側の病原因子に着目し,肺炎球菌性肺炎の重症化機序を系統的に検索してきた.その結果,各種細菌の中で肺炎球菌だけが自己溶菌能を有し,溶菌で漏れ出た細菌分子を用いてヒト免疫細胞を傷害し,次いで免疫細胞内のプロテアーゼを漏出させて肺傷害を誘導することで,感染と炎症を拡大させるユニークな病原機序を明らかにした.それら先行研究中に,肺組織において未解析のプロテアーゼ活性も上昇するとの知見を得た.本申請研究では,新たなShotGun-LC-MS/MS技術を採り入れ,免疫細胞を傷害する分子群を細菌と免疫の両側面から網羅同定し,肺炎重症化機序を統合的に解明する.得られる結果から,抗菌薬に代わる分子標的薬の開発研究を,ノーベル賞受賞で創薬実績のある連携研究チームと行う. 令和2年度に肺炎マウスより肺胞洗浄液を採取し,iTRAQ試薬を用いたタンパク質発現解析を行った.その結果,複数の肺炎球菌由来タンパク質および宿主タンパク質を同定した.そこで,同定した肺炎球菌タンパク質のノックアウト株を作製したが,顕著な病原性の変化を示さなかった.そこで,肺胞洗浄液中に検出された宿主タンパク質群に着目し,肺炎重症化との関連について検索を行った.その結果,HLAクラスII分子が好中球エラスターゼによって分解されることを発見した.令和4年度は,上記結果に引き続いて宿主タンパク質の解析を行い,上皮成長因子受容体(EGFR)が好中球エラスターゼによって分解されることを発見した.さらなる解析の結果,EGFRが分解されることにより,上皮成長因子による細胞増殖シグナルが阻害され,肺胞上皮細胞の増殖が阻害されることにより,肺炎による肺組織傷害からの治癒に遅延が生じる可能性が示された.
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