研究課題/領域番号 |
20K09904
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
十川 千春 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10253022)
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研究分担者 |
岡元 邦彰 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (10311846)
江口 傑徳 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (20457229)
河合 穂高 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10803687)
青山 絵理子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10432650)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 創薬 / 腫瘍オルガノイド / 三次元培養 / 細胞外小胞 / 薬剤スクリーニング |
研究実績の概要 |
癌の悪性化、転移および再発を制御するには、分子機序の解明と有効な抗腫瘍薬の開発が不可欠である。近年、癌の悪性化には癌細胞を取りまく腫瘍微小環境が影響するといわれ、癌細胞のみならず腫瘍微小環境を制御する因子も標的分子の候補に入れた検討が必要である。本研究課題では、三次元腫瘍オルガノイド形成とMMP9発現をモニタリングすることによる、独自の多元薬物評価系によって見出したヒット化合物をもとに、新規癌転移抑制薬開発に向けた創薬展開を行うことを目的とする。令和2年度は、これまで得られたヒット化合物のさらなるブラッシュアップのため、、腫瘍微小環境に対する薬剤の効果を評価可能な高次アッセイ系の構築に着手した。エクソソームをはじめとする細胞外小胞(Extracellular Vesicles: EV)は腫瘍微小環境制御に関わるとされる。腫瘍細胞および免疫系細胞が分泌するEVをモニタリングすることによって薬剤の腫瘍微小環境制御への影響を評価することを試みた。蛍光および発光で検出・定量可能なレポーターEVを得るために、免疫系細胞と癌細胞に対して脂質膜結合性の高いパルミトイル化シグナルをGFP及びTomato直列二量体のN末端に融合させることで,細胞及び細胞外小胞の脂質膜を蛍光標識した。またGaussiaルシフェラーゼを細胞及び細胞外小胞膜に発現させることで,ルシフェラーゼ標識した。樹立したレポーター細胞において、蛍光標識EVの確認とレシピエント細胞への取り込みが確認された。また、ルシフェラーゼ標識細胞の培養上清を用いてルシフェラーゼが検出可能であった。これらのレポーター細胞を用いたEVモニタリングによって、腫瘍微小環境における薬剤評価を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度当初の約1か月の自粛期間および建物改修工事に伴う移転などにより、計画よりやや遅れが生じた。 特に癌細胞および免疫細胞におけるEVの放出量の定量化が完了できず、薬剤評価の検討に着手するのが遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、独自の多元薬物評価系スクリーニングによって得たヒット合物をもとに、新規癌転移抑制薬開発に向けた創薬展開を行うことを目的とする。令和3年度は、腫瘍微小環境に対する効果検証のための高次アッセイシステム確立のために前年度着手したEVモニタリングを完成させ、ヒット化合物を中心に、ブラッシュアップを行う。また、高次アッセイシステム開発と同時並行してヒット化合物の作用機序解明を進める。これまでの検討でいくつかの候補標的分子が挙がっており、これら分子の発現変動解析および、EV調節因子が標的である可能性を見据え、EV内包因子プロテオミクス解析およびRNA解析を行う。また、同定した標的分子の機能性に基づいたアッセイ系の構築とハイスループット化およびヒット化合物類縁体の活性を検討する。ヒット化合物類縁体のスクリーニング結果をもとに、化合物デザインによる構造展開およびリード化合物創製へと発展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度初期の実験施行の遅延によりR2年度に計画していた実験を次年度へ延期したため、消耗品費を次年度へ繰り越した。また、リアルタイムPCR機器が不調となり修理が必要となったが(約30万円)、年度内に修理完了が見込めなかったため、次年度へ繰り越した。R2年度の繰越はR3年度に使用予定である。
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