研究課題
我々は昨年度の研究によって、血管作動性腸管ペプチド(vasoactive intestinal peptide: VIP)受容体2 (VIPR2)がPI3K経路を介して乳癌細胞遊走に関与することを明らかにしている。本研究では、VIPR2を安定発現させたヒト乳癌細胞株MCF-7およびMDA-MB-231を用いて、乳癌細胞増殖におけるVIPR2の関与と、その分子基盤の解明を目的に検討を行った。乳癌細胞へのVIPR2の安定発現はVIP誘導性の細胞増殖を促進した。また、ヌードマウスを用いたin vivoにおけるMDA-MB-231細胞の腹腔内増殖実験もVIPR2を安定発現させた細胞で亢進していることがわかった。一方、VIPR2選択的アンタゴニストペプチドKS-133の処置は、VIPR2過剰発現の効果を無効化し、VIP誘導性の細胞増殖を著しく阻害した。またVIPR2安定発現乳癌細胞では、VIP誘導時のcAMPや細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)レベルの増加が促進された。 さらに、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼキナーゼ阻害剤(MAPKK inhibitor, U0126)の処置は、VIPR2 安定発現乳癌の腫瘍増殖を、コントロール細胞と同レベルまで抑制した。これらの結果は、VIPR2シグナルがcAMP/ERK経路を介して乳癌細胞増殖を促進させることを示しており、VIPR2過剰発現によるこのシグナルの破綻が乳癌の増悪化につながる可能性を示唆している。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 2件)
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