研究実績の概要 |
歯周病菌P.gingivalisがマクロファージや樹状細胞が発現している免疫抑制型受容体であるSiglecを介して、宿主免疫応答を抑制していることを見出している。この歯周病菌によるSiglecを介した免疫抑制機構には、歯周病菌が産生するタンパク質分解酵素であるジンジパインによるSiglecの切断が必須であり、ジンジパインを阻害する化合物は、歯周病菌による免疫抑制効果を打ち消し、宿主免疫応答を回復させる新規歯周病治療薬となると考えている。歯周病菌はKgp, RgpA, RgpBの3種類のジンジパインを産生するが、この中でどのジンジパインがSiglecを切断するのかを明らかにするために、Kgp欠損株、RgpA/B欠損株、KgpとRgpA/B欠損株の3種類を入手し、Siglecの分解活性を検討した。Kgp欠損株はSiglecの分解活性が著名に減弱したが、RgpA/B欠損株ではわずかな減弱しか認められなかった。さらには、KgpとRgpA/B欠損株ではSiglecの分解活性が完全に消失した。この結果から、Kgp阻害剤が探索すべき阻害剤であり、その上でRgp阻害活性も有する方が、より有効な歯周病治療薬となりうる可能性が示唆された。これらの結果を踏まえて今後の方針としては、一次スクリーニングとしてKgp阻害剤を探索し、Kgp阻害活性が認められた化合物に対して、二次スクリーニングとしてRgp阻害活性を検討することとした。
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