研究課題/領域番号 |
20K09926
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
国分 栄仁 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (70453785)
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研究分担者 |
石原 和幸 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (00212910)
菊池 有一郎 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (30410418)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Treponema denticola / dentilisin / 細胞侵入 |
研究実績の概要 |
本研究はTreponema denticolaの細胞侵入機構と 免疫回避機構の解明と題し、研究内容を以下に示す3つの課題に分けて 3年間を通じて研究を遂行する。1. T. denticolaの細胞侵入にdentilisinをはじめとする病原因子がどのように関わるのか。2. 細胞侵入後のT. denticolaの挙動と侵入した本菌が宿主細胞に与える作用。3. 病原因子を阻害する物質による歯周病予防/治療を目的とした創薬への可能性の検討。 ひとつめのT. denticolaの細胞への侵入機構を明らかにするため、遺伝子欠損株を用い欠損株と野生株と比較して、これらの病原因子が侵入にどのように関わるのか解析を行う。細胞は口腔粘膜上皮癌細胞を使用した。評価法は時間毎に固定して走査型電子顕微鏡(SEM)、 透過型電子顕微鏡(TEM)、および蛍光抗体法による共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)を用いて観察し、侵入した細菌数を判定する。また、暗視野顕微鏡およびCLMSにて time-lapse撮影を行い、侵入時および侵入後の動態を経時的に検索し 、細胞侵入メカニズムを解析する。 次年度以降の研究として、細胞侵入後のT. denticolaの消化プロセスについての解析、および病原因子抑制による歯周病予防/治療薬の可能性の検討を行い、本年度の内容とともにまとめてT. denticolaの病原因子が本菌の動きに与える影響と宿主細胞への感染に与える影響を解析し、細胞内での病原因子の影響、病原因子制御を順に研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに病原因子の影響を調べるため、運動性について解析を行った。寒天内に形成したコロニーの面積は野性株よりも欠損株はコロニー形成の面積が減少していた。T.denticolaの動きを暗視野顕微鏡でタイムラプスにより撮影してトレースした結果、直線・曲線的な動き、あるいは前後にスイッチングする像を認め、移動の際に菌体表層の一部を基質に固定しながら移動する像を観察した。野性株では菌体が1回転すると約0.25µm移動し、1分間当たりの移動距離は野性株およびmsp欠損株はそれぞれ約16µm/min、15µm/minであるのに対し、prtP欠損株では4µm/minであった。本菌の欠損株は寒天ゲル内での移動、および液中や基質上での移動が低下したことから、表層タンパクが運動性に影響することを認めた。これらの結果から、T. denticolaの移動には表面に発現する病原因子が影響すると考えられ、口腔環境でも同様に歯肉溝内や粘膜上皮での移動にdentilisinとmspが関わることが示唆された。移動が制限されることは感染部位の波及にも影響するため、病原因子の関わる影響は大きいと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
二つ目の課題として、細胞侵入後のT. denticolaの動態を調べるため、粘膜上皮細胞と単球由来のマクロファージに感染させて、細胞内での局在性を観察する。そして宿主細胞のphagocytosisから消化までのプロセスに関するタンパク発現について解析を行う。また、感染による細胞のサイトカイン産生および細胞内タンパクの局在の変化について解析を行う。前述の実験と同様に各細胞に感染させ、phagocytosisに関連するタンパクの発現を観察する。また、T. denticolaの細胞内での生存性について 蛍光抗体法にて時間ごとに生死の割合を解析する。これにより貪食後に細胞内で本菌phagocytosisから 逃れるかについて 解析を行う。また、細胞からmRNAを抽出し、炎症性サイトカイン、β-difencin等のmRNA発現量を測定し、本菌の侵入がどのように細胞内のシグナルを変化させるのか解析する。
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