研究課題
グラム陰性桿菌Porphyromonas gingivalisは歯周病の代表的な原因細菌として知られている。本菌は付着因子としてMfa1線毛を持つ。Mfa1線毛は主にMfa1タンパク質により構成されるが、その他に4つの微量成分Mfa2、Mfa3、Mfa4及びMfa5が含まれる。Mfa2は線毛基部に、Mfa3-5は線毛先端に位置すると考えられている。これまで我々は、Mfa1-5タンパク質がmfaクラスターより発現すること、mfa1 にはmfa170及びmfa153という2つの遺伝子型が存在することを明らかにしてきた。令和2年度は、mfa1遺伝子型が不明である12株についてゲノムを解読し標準株との比較解析を行った。その結果、mfa170には2つの遺伝子型(mfa170Aおよびmfa170B)が認められることが分かった。さらに、Mfa5にはA-Eの5つの遺伝子型が存在することが分かった。一連のゲノム解析の中で、mfa1の配列が異なる株やmfa1-mfa4を持たず線毛の先端因子mfa5に相当するvon Willebrand factor A containing protein(VWA)を単独に持つ株やmfa1-mfa4の下流にVWAをタンデムに持つ株等が見つかった。そこで、令和3年度はVWAをタンデムにもつ株に注目し、新たに見つかったVWAタンパク質(VWA2)に対する抗血清の作製に取り組んだ。また、VWA2の機能を解析するために、vWA2遺伝子欠損株の作製にも着手した。 一方、Mfa1タンパク質の遺伝子型解析については、Mfa170AおよびMfa170Bの抗原性の違いについて抗 Mfa170A抗体を使用したウェスタンブロットにより解析したところ、これら2つのMfa1タンパク質の間では抗原性が異なる可能性が示された。
3: やや遅れている
抗VWA2抗血清の作製やVWA2遺伝子欠損株の作製に至っていないことから、「やや遅れている」とした。
今後は令和3年度に予定していた変異株および特異抗体の作製を進めるとともに、新たな実験についても実験系の確立を目指す。また、計画以上に進んでいる点 については、今後も実験を継続して研究成果を得るとともに、新たな展開について模索する。特に、VWA2タンパク質の機能解析を進める事により、Mfa1線毛の役 割が明らかにできるように努力したい。
令和3年度にて作製することができなかったVWA変異株の作製に次年度使用額をあてる予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件)
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