研究課題
造血器腫瘍とその化学療法により免疫応答性が変化した状態では,口腔内の恒常性バランスが崩れ,細菌との共生関係の乱れが生じることが想定される。本研究は,これらの指標として口腔細菌叢および IgA 抗体応答性の変化を評価し,口腔粘膜炎の発症,増悪などの感受性を規定する因子となりうるかどうかを検証することを目的としている。これまでに,造血器悪性腫瘍患者における化学療法開始に関連した口腔細菌叢を特徴づけ,口腔細菌叢の構成と口腔粘膜炎の関連を示すことができた。これらの結果をまとめ,論文発表した。本年度は,昨年度までに造血器悪性腫瘍患者の化学療法開始前後に採取した口腔サンプルを用いて,化学療法開始後の口腔粘膜炎の発症の有無と,口腔細菌叢,IgA濃度,IgA結合細菌叢の特徴の関連を評価した。口腔サンプル内の IgA 結合細菌と非結合細菌を IgA 特異 PE 標識抗体および MACS システム (Miltenyi Biotec) の PE 磁気ビーズを使用して分離し, それぞれを16S rRNA メタゲノム解析して比較することによって,IgA結合細菌叢の特徴を評価した。口腔内のsIgA濃度はELISAによって定量した。その結果,化学療法開始後に口腔粘膜炎を発症した患者の口腔細菌叢において,特徴的な細菌群を見出した。また,口腔粘膜炎の発症時には,口腔内のIgA濃度が高く,特定の細菌の存在比率が異なること,さらにこの時のIgA結合細菌叢の特徴を明らかにした。これらの臨床的検証は,口腔粘膜炎の予測,予防に繋がる基礎的データとなると考える。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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