研究課題/領域番号 |
20K09933
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
根本 英二 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (40292221)
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研究分担者 |
鈴木 茂樹 東北大学, 大学病院, 講師 (30549762)
山田 聡 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40359849)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯根膜細胞 / エクソソーム / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
当該年度は,歯根膜組織に局在する細胞としてマウス由来セメント芽細胞に焦点を当てて研究を行なった。マウス由来セメント芽細胞由来エクソソームの破骨細胞分化誘導系に及ぼす影響について解析した。 マウスセメント芽細胞株OCCM-30の培養上清からエクソソームを抽出した。透過電子顕微鏡解析を行ったところ,直径約50~200 nmのエクソソームが存在することが確認された。マウス破骨細胞前駆細胞株RAW264.7細胞を,リコンビナントreceptor activator of nuclear factor-κB ligand(rRANKL)刺激により破骨細胞へ分化させる実験系を用いて,エクソソームの影響を調べた。エクソソームは,rRANKLによって誘導される酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)活性陽性細胞の形成を増強した。また,リアルタイムPCR法およびWestern blot法による解析から,エクソソームは,rRANKL刺激による破骨細胞関連遺伝子およびタンパクの発現誘導に対しても増強することが明らかとなった。一方,rRANKL非存在下では,細胞外小胞による破骨細胞分化増強作用は認められなかった。Western blot法の解析から,エクソソーム自体にはRANKLの発現は検出されなかった。一方,セメント芽細胞の細胞培養上清を用いて,rRANKL誘導性破骨細胞分化に与える影響について,TRAP活性陽性細胞の形成および破骨細胞関連遺伝子の発現の観点から調べた。細胞培養上清は,rRANKL誘導性破骨細胞分化を部分的に抑制するとともに,エクソソームによるその増強作用に対して,ほぼ完全に抑制することが明らかとなった。 以上のことから,セメント芽細胞から分泌されるエクソソームは,rRANKL誘導性破骨細胞分化に対して増強作用を有していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究成果から,セメント芽細胞から分泌されるエクソソームには,rRANKL誘導性破骨細胞分化に対して増強作用を有していることが明らかとなったことにより,次年度においては,本反応系を研究の基盤とすることができる。今後予定されている,メカノシグナルおよびWNTシグナルによるエクソソーム機能に与える影響については,当該年度の研究実績からすでに実験系が適切に確立していることから,次年度に向けてのスムーズな解析につなげることが可能であると言える。したがって,現在までの研究の進捗状況は概ね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究成果である「セメント芽細胞から分泌されるエクソソームは,rRANKL誘導性破骨細胞分化に対して増強作用を有する」という反応系に対して,今後はさらにメカノシグナルおよびWNTシグナルが,破骨細胞分化誘導活性の増強作用にどのような影響を与えるかについて解析を進めていく。並行して,骨芽細胞系の分化誘導活性に対する,同エクソソームの影響についても解析を行い,破骨系・骨芽系の両面からの反応系について幅広く把握したのち,エクソソームに内包されているmiRNAの抽出,そして網羅的miRNA解析につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的なコロナ感染拡大の情勢により、特に当該年度前半においては、実験の進行度に若干滞りが見られ、それに伴い、必要物品の発注が後ろ倒しとなった。その分に関しては翌年度分として請求した助成金と合わせた物品費としての使用計画とした。
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