研究課題/領域番号 |
20K09934
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
竹内 康雄 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (60396968)
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研究分担者 |
渡辺 孝康 日本大学, 歯学部, 助教 (70725514)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯周炎 / 歯肉炎 / 細菌叢 / メタトランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、歯周病患者で縦断的に採取したプラークを用いて、メタトランスクリプトームデータに基づく菌叢解析を行うとともに、患者のメタデータや時系列間の因果関係を推定する数理的解析を加えることで、病状進行の契機となるKeystone種や病原細菌叢の特徴を明らかにすることである。本年度は、前年に引き続き、同一口腔内に歯周炎、歯肉炎、健常歯周部を有した者を被験者において、細菌組成や遺伝子発現パターンを各部位で比較し、横断データとしての結果をまとめた。 歯周病の進行に伴い、既知の歯周病原細菌であるRed Complex(P. gingivalis、T. forsythia、T. denticola)の活動性が高くなることが確認された一方で、これらの細菌以上に活動性が高い細菌(Fretibacterium fastidiosum、Eubacterium nodatum、Filifactor alocis、Eubacterium saphenumなど)が存在することが明らかとなった。また細菌間のつながりを示すネットワーク解析により、健常な部位と歯周炎の部位では明らかに異なる種類の細菌によりネットワークが構成されていること、歯肉炎ではこれら2つの特徴を含むより複雑なネットワークが形成されていることが明らかとなった。この結果は、歯肉炎部位が健常部位と歯周炎部位の中間的疾患ステージであることが細菌学的にも示された。遺伝子発現を細菌機能観点でみた場合、細菌の走化性と鞭毛の集合が疾患の進行と関連していることが示された。これらの遺伝子はF. alocis、F. fastidiosum、およびRed Complexの存在と関連するとの報告があり、これを支持する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究経過をまとめ、国際誌に報告した。昨年度、コロナの影響で遅れていた分の臨床サンプルの採取(治療前後とも)を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
治療前後の縦断的なサンプルは予定の3/4ほど集まり、現在、サンプル調整およびシーケンスによる配列の決定を進めている。サンプルの状態が悪く、解析に不適と思われるサンプルが複数みつかったことから、残り1/4のサンプル回収のほか、追加でサンプル採取も行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、コロナウイルスの感染拡大に伴う病院の一時閉鎖のため、新たな臨床サンプルの採取(治療前後とも)を進めることができなかったため、購入していた消耗品を本年度使用する部分が多く、予定していた消耗品の購入が少なかった。また、本年度投稿した論文掲載費の支払いが出版社側の事情で次年度になった。
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