研究課題/領域番号 |
20K09942
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
吉村 篤利 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (70253680)
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研究分担者 |
山下 恭徳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10782568)
尾崎 幸生 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (60204187)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯周病 / インフラマソーム / 全身疾患 |
研究実績の概要 |
歯周病は、疫学的に2型糖尿病、動脈硬化、関節リウマチなどの全身疾患と関連している。 これらの全身疾患には、局所に無菌性に炎症が引き起こされるという共通した特徴がある。 近年、この無菌性炎症に“NLRP3インフラマソーム”と呼ばれる自然炎症経路が関与していることが明らかとなった。即ち、局所に蓄積した膵島アミロイドポリペプチドや血管壁コレステロール結晶などのダメージ関連分子パターン(DAMPS)によりNLRP3インフラマソーム が活性化され、それぞれの疾患の原因となる。活性化したNLRP3インフラマソームはIL-1β 前駆体を成熟型へと転換し、局所に炎症を惹起して病態に大きな影響を与える。しかしながら、IL-1β産生には、予め白血球が病原体などによる刺激で細胞内にIL-1β前駆体を合成している必要がある(プライミング)。本研究では、歯周組織における炎症が末梢血白血球をプライミングすると仮説を立て、新たな視点から歯周病と全身疾患の関連について検討することとした。 令和2年度は、慢性歯周炎患者22名に、歯周基本治療前後に歯周組織検査と採血を行い、インフラマソームプライミング状態を解析するため、末梢血から単核球を分離し、RNA抽出後に、定量的reverse transcription PCRによりIL-1βとインフラマソーム構成因子ASC、NLRP3、Caspase-1 mRNA発現量を測定した。歯周基本治療後、歯周組織の状態は有意に改善していた。また末梢血単核球においてIL-1βとASC mRNA発現量は減少したが、NLRP3、Caspase-1mRNA発現量は減少しなかった。今後はさらに多くの患者に対して歯周基本治療を行い、治療前後のインフラマソームプライミング状態について解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、検査前3か月以内に歯周治療を受けていない慢性歯周炎患者22名に、歯周基本治療前後に歯周組織検査として、プロービング値probing pocket depth (PPD)、プロービング時の出血bleeding on probing (BOP)の記録と、同時に末梢血を採血した。インフラマソームプライミング状態を解析するため、末梢血から単核球を分離し、RNA抽出後に、定量的reverse transcription PCRによりIL-1βとインフラマソーム構成因子ASC、NLRP3、Caspase-1 mRNA発現量を測定した。この際、健常者のmRNA量を1とし、相対的mRNA量を求めた。次にNLRP3インフラマソーム刺激時のIL-1β産生量を測定するため、単核球をシリカ結晶で刺激し、上清中のIL-1β産生量をELISAで解析した。 歯周基本治療後、PPD 4-5mm、PPD 6mm以上の部位の割合、BOPは有意に減少した。また末梢血単核球においてIL-1βとASC mRNA発現量は減少したが、NLRP3、Caspase-1 mRNA発現量は減少しなかった。BOP 16%未満群とBOP 16%以上群に分けて各mRNA発現量を観察すると、BOP 16%未満群(10人)ではASCとNLRP3 mRNA発現量は有意に減少し、IL-1β mRNAも減少傾向を示した。BOP 16%以上群(12人)ではIL-1β、ASCとCaspase-1mRNA発現量は有意に減少したが、NLRP3 mRNA発現量は増加傾向を示した。末梢血単核球をシリカ結晶で刺激後の全サンプルのIL-1β産生量に有意差はなかったが、BOP 16%未満群で減少傾向を示し、BOP 16%以上群で有意に増加した。 令和2年度に解析できたのは22名であり、目標値より少ないが、1年目としては、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度も、検査前3か月以内に歯周治療を受けていない慢性歯周炎患者に研究内容を説明して同意を取得した後、歯周基本治療前後に歯周組織検査として、プロービング値probing pocket depth (PPD)、プロービング時の出血bleeding on probing (BOP)の記録と、同時に末梢血を採血する予定である。2型糖尿病、動脈硬化、関節リウマチ、痛風、偽痛風、アルツハ イマー病などの全身疾患の既往を問診にて調査する。 インフラマソームプライミング状態を解析するため、末梢血から単核球を分離し、RNA抽出後に、定量的reverse transcription PCRによりIL-1βとインフラマソーム構成因子ASC、NLRP3、Caspase-1 mRNA発現量を測定する。この際、健常者のmRNA量を1とし、相対的mRNA量を求める。次にNLRP3インフラマソーム刺激時のIL-1β産生量を測定するため、単核球をシリカ結晶で刺激し、上清中のIL-1β産生量をELISAで解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、検査前3か月以内に歯周治療を受けていない慢性歯周炎患者22名に、歯周基本治療前後に歯周組織検査として、プロービング値probing pocket depth (PPD)、プロービング時の出血bleeding on probing (BOP)の記録と、同時に末梢血を採血し、インフラマソームプライミング状態を解析した。これは、当初の予定よりは少ない慢性歯周炎患者を対象とした解析であるが、令和2年度は、年度始めより新型コロナウイルス感染症が拡大しており、初診患者が減少したことと、外来患者の診療制限が行われたことが影響している。解析した患者数が少なかったため、検査数も減少し、解析のために予定していた物品の購入費も減少した。また、調査研究のために予定していた国内および国外での学会への参加も、全て現地開催が中止となり、旅費を使用する必要がなくなった。これらの原因から、次年度使用額が生じた。 令和3年度は、慢性歯周炎患者を対象とした解析を目標数に近づけるために研究を継続し、そのために必要な実験器具の購入費が必要となる。また、延期となった学会の旅費にも充てる予定である。
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