研究課題/領域番号 |
20K09944
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
長澤 敏行 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (90262203)
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研究分担者 |
岩崎 剣吾 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (40401351)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HOX / Periodontal ligament / Gingival fibroblast / dermal fibroblast |
研究実績の概要 |
組織再生には細胞・Scaffold(足場)・増殖因子が必要であると言われている。細胞としては、近年では歯肉、歯根膜、骨膜などから培養された間葉系幹細胞の移植が試みられ、scaffoldとしては古くから多くの骨補填材が検討され、増殖因子に関してはFGF-2が再 生療法として顕著な効果を上げて既に保険診療にも導入されている。しかし再生療法の目 覚ましい発展にも関わらず、再生治療の結果には大きな個人差が認められる。このことは手術を受ける患者側の再生能力に関する生物学的解析がほとんど行われてこなかったことが大きな要因ではないかという疑問を生じさせる。本研究では患者側の再生能力を規定する分子としてホメオティック遺伝子(HOX遺伝子) に着目した。これまでHOX遺伝子は昆虫の体軸形成から脊椎動物の臓器発生まで、主として生 体内での位置に応じた組織の形成を司る因子と して発生学領域で注目されてきた。しかし近年、 関節リウマチの病巣部において線維芽細胞が部位特異的に異なるHOXとmiRNA遺伝子を発現し、 さらにこのHOX遺伝子/miRNAの発現が組織破壊 や炎症病態を決定している事が報告された。これらの報告は、miRNAとHOX遺伝子が発生期の組織形成だけでなく、成体の慢性炎症における 組織破壊をもコントロールする可能性がある事を示唆している。まず歯肉、歯根膜および皮膚の線維芽細胞株を用いてマイクロアレイ解析を行ない、HOX遺伝子発現を検討した。その結果、HOX遺伝子発現は皮膚が最も離れており、歯肉線維芽細胞、歯根膜線維芽細胞では類似性が認められた。これらのことから歯周組織を構成する株化細胞にもHOX遺伝子の発現が見られ、歯根膜と歯肉では差異が存在するものの、他の部位と比較すると共通点が多いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Covid-19による外来制限のため臨床検体を集めることが困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト歯周炎組織、健常組織におけるHOX遺伝子/miRNA発現を検討する。フラップ手術を必要とする歯周炎患者20名、矯正用便宜抜去を行う患者20名を目標症例数とする。被験者のアタッチメントレベル・骨欠損などの臨床症状を記録し、歯周炎患者のフラップ手術時に肉芽組織を採取する。矯正用便宜抜去患者では抜去歯から組織を採取する。採取した組織に発現する遺伝子のマイクロアレイ解析を 行い、臨床症状との相関について検討する。また採取した組織から歯肉線維芽細胞、歯根膜線維芽細胞、感染肉芽組織の線維芽細胞を分離・培養し発現遺伝子のマイクロアレイ解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はCovid-19による外来の制限のためにヒト由来の検体を採取する事ができず、そのための経費が残ったため。
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