研究実績の概要 |
本研究は歯周炎局所の線維芽細胞が発現する部位特異的なHOX遺伝子/miRNAの発現を明らかにする目的として様々な線維芽細胞のホメオボックス遺伝子の解析を行った。歯肉、歯根膜、口唇および皮膚の線維芽細胞株を用いてマイクロアレイ解析を行ない、HOX遺伝子発現を検討した。矯正の便宜抜去時に同一患者から歯根膜線維芽細胞と歯肉線維芽細胞を分離し、遺伝子発現を比較した。皮膚と比較して歯肉、歯根膜、口唇の線維芽細胞株ではEN1, DLX-1, DLX-2, SIX, SHOX1, DLX5, DLX4の発現が上昇していた。歯根膜および歯肉線維芽細胞株では口唇および皮膚の線維芽細胞株と比較してDLX5, DLX6およびBarx1の遺伝子発現量が多いことがRT-PCRで確認された。同一患者から得られた歯根膜細胞と歯肉線維芽細胞では歯根膜線維芽細胞でDLX5の遺伝子発現が歯肉線芽細胞よりも有意に高かった。歯周組織を構成する株化細胞にもHOX遺伝子の発現が見られ、歯根膜、歯肉および口唇では差異が存在するものの、皮膚と比較すると共通点が多く、部位特異的なホメオボックス遺伝子の発現が線維芽細胞に保存されていることが示唆された。DLX5, DLX6およびBarx1は歯根膜および歯肉線維芽細胞で高く、歯周組織に特異的なホメオボックス遺伝子であり、とりわけDLX5の高発現が歯根膜線維芽細胞の特徴であることが示唆された。さらにsiRNAを用いて歯根膜細胞のDLX5およびDlx6発現を抑制し、ALP、OPGおよびIL-6発現の発現変化を検討した。その結果DLX5、DLX6の抑制によってALP発現は低下し、OPG発現は上昇した。これらのことから歯根膜細胞は歯肉線維芽細胞と比較してALP発現が高く、OPGおよびIL-6発現が低いという特徴は、DLX5およびDLX6発現と関連することが示唆された。
|