研究実績の概要 |
女性ホルモンであるエストロゲンは様々な疾患の発症・進展の抑制に寄与する。エストロゲンは骨のリモデリングにも関与し、更年期以降のエストロゲン欠乏が骨粗鬆症の原因となることが知られている。これまでに申請者らは、「炎症制御による硬組織再生誘導」という視点から、骨芽細胞や象牙芽細胞様細胞において、グルココルチコイド受容体の共役因子Macromolecular Translocation Inhibitor-II(MTI-II)が高い抗炎症および硬組織誘導能を持つことを報告した。エストロゲン受容体とグルココルチコイド受容体は高い相同性を有するため本研究では、MTI-IIの持つ抗炎症能・硬組織形成能と、エストロゲン作用増強能を利用した硬組織再生法を開発することを目的としている。 これまでに、広島大学 疫学研究倫理審査委員会で承認後、研究への同意が得られた患者の抜去歯から歯髄細胞を樹立し、エストロゲンレセプター(ERa, ERb)の発現を確認した。次に骨形成因子Bone Morphogenetic Protein-4 (BMP4) 刺激による遺伝子の発現変化を調べたところ、BMP Response geneであるId1の遺伝子発現の上昇とアポトーシス関連遺伝子であるCaspase3, 8遺伝子の発現抑制が認められた。そこでId1の機能的役割を調べるために、歯髄細胞に対してターゲット遺伝子Id1のsiRNAを遺伝子導入して細胞増殖能を測定したところ、Id1遺伝子をノックダウンさせた群で有意な細胞増殖能の抑制が見られた。さらにフローサイトメトリーを使ってアポトーシス陽性細胞の割合を調べたところ、Id1遺伝子をノックダウンさせた群でアポトーシス陽性細胞の割合が上昇していることがわかった。このことから、Id1は歯髄細胞の細胞増殖に関与している可能性が示唆された。
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