研究課題/領域番号 |
20K09963
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
坂井 信裕 昭和大学, 歯学部, 講師 (90286849)
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研究分担者 |
高見 正道 昭和大学, 歯学部, 教授 (80307058)
根岸 貴子 (古賀貴子) 順天堂大学, 医学(系)研究科, 非常勤講師 (90451905)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脂質代謝 / 歯 / 象牙質 / 骨代謝 |
研究実績の概要 |
高脂肪食を継続的に摂取すると脂質異常症,肥満,糖尿病など生活習慣病の発症は広く知られている。動脈硬化症の原因物質である低密度リポタンパク質(LDL)は骨組織代謝にも関連しており骨粗鬆症を促進することが近年注目されてきた。しかし歯について環境要因や脂質による全身疾患に関連した歯の構造変化は不明である。本研究では骨および歯の恒常性維持における脂質代謝関連分子の機能解明を目的とする。脂質異常を呈するLDL受容体欠損(Ldlr-/-)マウスや歯と骨と上皮形成関与タンパク質であるペリオスチン欠損マウスを用いて,脂質が及ぼす硬組織変化の発症メカニズムについて解析する。 我々は,マウスに高脂肪食(脂肪分36%, HDF)を摂餌させると総コレステロール値上昇,LDLの増加を伴う脂質異常症を呈していた。マウスの骨を解析した結果,大腿骨海綿骨量の低下と骨髄内脂肪滴が増加していた。一方,下顎切歯エナメル質に切削痕を付け成長量を計測した結果,成長速度が遅延していることが明らかとなった。さらにその切歯は象牙質肥厚により歯髄狭窄を呈していた。またエナメル質は分化傾向を認めた。今回,麻酔下でマウス切歯を経時的に解析したが,同様の報告はこれまでない。さらに同時に大腿骨骨量も解析することで,歯と骨代謝の両面から病態を解明することが可能であり,脂質代謝と硬組織代謝の関連機序解明は歯科医学的にも重要な研究であると言える。Scientific Reports, 20;10(1):5102, 2020
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究初年次に、高脂肪食を摂餌させたマウスの切歯歯質形成に対する脂質代謝の影響に関する論文を発表することができた。歯の形成障害を引き起こすことはこれまでに報告はなかったことから、脂質代謝と歯牙形成の関連性を示した有意義な論文であると言える。計画以上に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
マウス餌に含まれる脂質とコレステロールの量のバランスによって、骨代謝調節に変化が起こることが判ってきた。現在は、脂肪量とコレステロール量のパーセンテージを数種類、組合せることで骨吸収を誘発する配合を研究している。また骨吸収を呈した高脂血症マウスの骨髄細胞を単離し、破骨細胞の誘導を活性化の原因を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は抗体検査試薬を複数購入予定のため、次年度へ繰越しを行う。
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