研究課題/領域番号 |
20K09964
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
伊藤 弘 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30184683)
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研究分担者 |
小川 智久 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (20307961)
沼部 幸博 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (90198557)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯周組織検査 / 歯肉溝滲出液 / ヘモグロビン / 歯周病 / 発症前診断 / bleeding on probing |
研究実績の概要 |
初年度の実績として、計画調書通り Clinical Oral Investigation に投稿し、受理された経緯がある (https://doi.org/10.1007/s00784-020-03396-0)。この報告は、歯肉溝滲出液( gingival crevicular fluid、以下 GCF )成分解析において、カットオフ値と統計学的解析を駆使した解析から、ヘモグロビン( hemoglobin、以下 Hb )の存在が、歯周組織検査結果において、歯周組織が健康であるのにも拘らず、組織損傷の指標が有意に増加することを示した。これは、Hb の測定が、既存の歯周組織検査精度を向上させ、更には歯周組織検査を強力に補完する有効な生化学的マーカーであることを示すものである。同時に、歯周組織が健常であるのにも拘らず探知できるマーカーとして、発症前診断の可能性も示唆され、極めて有益な発表となった。これらの報告に加え、予備試験ならびにその考察を含めたまとめに関しては、日本歯周病学会、日本歯科医学会総会において公表した。 現在我々は、本報告を基盤とし、既存の歯周組織検査に加え、GCF に観察される Hb 、さらには組織損傷を示す生化学的マーカー( aspartate aminotransferase、タンパク質量)を加えて、臨床的・生化学的側面から解析を行った。その結果、従来の歯周組織検査に対し、Bleeding on probing (以下 BOP )検査の動態に齟齬が生じ、GCF の Hb 検査との併用が極めて有用であることが明らかとなった。 本検索結果は、世界への発信準備のため、現在欧文誌への投稿を鋭意準備している。現在、歯科領域では、歯周病の重症化予防、歯周病の安定期治療の推進が挙げられ、本研究は時代に極めてマッチする考え方であり、本研究を積極的に進める後押しとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年時における、本研究の目標は、GCF における Hb 検査の意義を、長期的な追跡調査から明らかにすることである。しかしながら、現時点でも感染拡大に歯止めが止まらない COVID-19 の感染拡大により、長期的な予後を追跡する被験者のドロップアウトが相次いで散見されることが、今回の評価理由である。しかしながら、来院していただいた患者の基本データと GCF は、確実に記録・採取・蓄積しており、データの解析を鋭意行っている。 現時点においても、来院していただいた患者の貴重な資料・試料の収集は、精力的に行っており、ドロップアウトを補填できるためのサンプル採取を精力的に行っている。なお、データ収集は、令和4年度秋をめどに考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、精力的に患者から得られたデータを記録・蓄積している。患者資料・試料に対し、現在まとめている論文に加え、より長期的な予後の追跡を行うことが、今後の大きな推進方策である。現在、取りまとめている研究結果は、プロービングデプス (以下 PD )と BOP といった、歯周組織検査では最も重要な項目の限界を明らかにし、その検査の限界を補填する追加検査項目の意義について、欧文誌に耐えうる状態でまとめている。我々の研究結果から、その補填試料は、GCF の Hb と決定し、GCF 検査の併用の意義について、世界に発信したいと考えている。 本研究成果に対する公表は、現在欧文誌に対し、2編投稿する予定である。同時に、論文作成に当たり得られたサブのデータは、日本歯周病学会会誌への投稿と、各種学会において積極的に公表し発信していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた、海外出張が COVID-19 の感染拡大による自粛のために、次年度使用額が生じてしまった経緯がある。この資金については、積極的な論文作成を行い、英文校正・統計学的解析など、人的資源の活用に充てたいと考えている。
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