研究課題/領域番号 |
20K09970
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
八幡 祥生 東北大学, 大学病院, 講師 (30549944)
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研究分担者 |
齋藤 正寛 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40215562)
山田 聡 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40359849)
半田 慶介 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (40433429)
野杁 由一郎 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50218286)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 根尖性歯周炎 / 炎症性腸疾患 / 治療抵抗性 |
研究実績の概要 |
本研究は、全身疾患下で増悪化ならびに治療抵抗性化する根尖性歯周炎の病態機構を解明し、アンメット・メディカル・ニーズとなっている治療抵抗性根尖性歯周炎に対する新規治療基軸を構築することを目的としている。その中で我々は、全身疾患の1つ、炎症性腸疾患(IBD)に着目した。IBDによる腸管免疫の破綻は、腸の炎症のみならず全身各所の炎症を増悪させる難治疾患であり、臨床報告において根尖性歯周炎との関連が指摘されている。これまでにIBDモデルマウスを用いて根尖性歯周炎を併発させることで、根尖性歯周炎が増悪化することを見出してきた。昨年度は、その炎症動態の分子免疫機構を解明するために、網羅的遺伝子解析およびフローサイトトメトリーによる解析を進めた。その結果、IBDを併発することにより、通常の根尖性歯周炎よりも、明らかに炎症関連遺伝子の発現が上昇すること、その炎症増悪には好中球、単球/マクロファージ、Th17が特に関連していることを明らかにした。発現遺伝子群については炎症関連遺伝子、特に好中球の脱顆粒に関連した遺伝子が多く発現していることを見出した。さらに、IBD単独発症群においても顎骨内に炎症関連遺伝子発現の亢進を確認した。この事実は、ヒトで確認されているIBDが契機となって生じる全身各所の炎症の増悪化と矛盾しない。つまり、IBDによりすでに全身的に炎症が亢進しているところに、根尖性歯周炎などのPAMPs/DAMPsなどのデンジャーシグナルが加わることによって、その炎症が難治化するという病態機構が考えられる。次年度は、この増悪化する炎症にさらに着目し、治療標的群の検討および介入効果の検討を図る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網羅的遺伝子解析およびフローサイトメトリーによる病態機構の解明については、概ね順調に推移している。一方で、今後さらに詳細に炎症動態を検討する必要があり、次年度にすすめていく予定となる。また、治療標的の検索はもちろん、治療モデルの確立も同時に必要となる。この点、本研究室では全身応用モデル/局所治療モデルをすでに確立しており、次年度はこれらの動物実験モデルを基に、治療効果の検討を進めていく予定となる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、最も重要なものは治療効果を検討するモデルの確立となる。まずは、当初の研究計画通り、局所応用による系を用いて治療標的アンタゴニストの局所投与を行う。具体的には、大腸炎/根尖性歯周炎併発モデルマウスの第一臼歯の根管形成を行い、根尖性歯周炎による顎骨破壊を惹起させた後に、根管内を消毒薬による化学的洗浄を実施する。その後根管を薬剤輸送経路として、マイクロインジェクターと37Gニードルを用いて、アンタゴニストを顎骨内に直接輸送する。薬剤投与は2日間隔で、安楽死までの間行う。安楽死後は、マイクロCTによる根尖周囲顎骨破壊量の定量、予期してしている炎症関連遺伝子の発現量解析、および組織学的検索として、HE染色、免疫組織学的染色(Ly6G、MMP9、Mac2)を行い、根尖性歯周炎による炎症細胞浸潤を観察する。
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