研究課題/領域番号 |
20K09972
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
平石 典子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (20567747)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 固体核磁気共鳴装置 / フッ化物 / 歯質ミネラル / う蝕予防 / フルオロアパタイト / X線回折 |
研究実績の概要 |
ウシの歯のエナメル質と象牙質の結晶性ナノ構造の違いを、X線回折(XRD)と固体核磁気共鳴(SS-NMR)を用いて詳しい評価を行った結果をまとめ、学会発表、論文発表を行った。高濃度フッ素が推奨されているが、特にエナメル質ではフッ化物の取り込み・反応性が少ないと判明している。格子サイト内の水酸基が、Fイオンに置換されると同時に、副産物のCaF2が、フッ化物の種類に限らず生成させることから、フッ化物の濃度より、フッ化物の酸性・中性により、最終歯質ミネラルへのフッ素の取り込み影響されることが容易に想像された。よって、市販の2%NaF配合フッ素歯面塗布剤である、中性バトラーフローデンフォームN 2%(サンスター社)、及び、バトラーフローデンフォームA酸性2%(サンスター社)を使用し、エナメル質、象牙質へのフッ素の取り込みを固体NMRにて測定した。結果、酸性フッ素歯面塗布剤が、エナメル質・象牙質共に、フッ化物生成が多く見られた。フルオロアパタイトと思われる化学シフトと共に、CaF2の生成が顕著に多く見られた。酸性状態でフッ化物を歯質に反応させることで、アパタイト組成分である、OH, Ca, PO4 イオンが一旦溶出し、酸性状態でも高濃度Fイオンを反応し、フルオロアパタイトを生成させると共に、副産物のCaF2が生成されると考えられた。酸性状態では基質の歯質を溶解させるが、中性化するに従い、フッ素は何らかの形で取り込まれていると考えられ、これらが抗う蝕効果を発揮できると期待できた。また、低濃度10ppmのフッ化物イオン濃度を、過飽和カルシウム、リン酸イオンと、pH7.4条件下で共沈させた場合の、フッ素残り込みをXRD・ Rietveld refinement法とSS-NMR法により分析した。結晶格子への取り込みと、OH基サイトへの取り込みが確認されたが、やはり同時にCaF2生成が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
固体NMRによる解析は、理化学研究所NMR研究開発部門(NMR応用利用グループNMR先端応用外部共用チーム)の技術的サポートにより、測定および分析方法を遂行している。2022年度より、組織再編成で19F- NMR分析の機器が使用できないとの連絡を受けており、外部施設(早稲田大学物性計測センターラボ)を検討した。スピン速度は8kHzと遅いものの、大きめのrooterに試料を入れ、6400積算に増やして測定した。しかし、回転速度よりも化学シフト異方性が大きな場合には,観測されている主信号から左右にスピニングサイドバンド(SSB)とよばれるゴーストの信号が現れるため、フルオロアパタイトとCaF2の区別はやや困難であった。事実上、19F- NMR分析は継続しておらず、進捗状況の遅れの要因である。 低濃度10ppmのフッ化物イオン濃度を、過飽和カルシウム、リン酸イオンと、pH7.4条件下で共沈させた場合の、フッ素残り込みをXRD・ Rietveld refinement法とSS-NMR法により分析した。これらの19F- NMR分析は、理化学研究所NMR研究開発部門にて、過去に測定したものに、解析を施したものであり、結果、フッ素の置換により結晶サイズが小さくなり、2D HetCor NMRではフッ素のOH基サイトへの取り込みが確認され、フルオロアパタイト、CaF2、及びNaFの残留が、28.7 %、66.7 % 、4.6 %現れた。中性条件ではCaF2生成しやすい環境であると推測された。
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今後の研究の推進方策 |
本課題では、フッ素の効果関連の分析解析技術として、19F- NMR分析は、原子レベルでの、化学理的性状分析を行う上で、必要である。他の外部施設(早稲田大学物性計測センターラボ)を検討し、低速MASで実施しており、結果発表可能か検討を進める。必要なら、受託先を早急に探すべく、可能性を求めて他機関と交渉中である。市販の2%NaF配合フッ素歯面塗布剤である、中性バトラーフローデンフォームN 2%(サンスター社)、及び、バトラーフローデンフォームA酸性2%(サンスター社)を使用し、エナメル質、象牙質へのフッ素の取り込みを19F- NMR分析にて測定した結果、酸性2%フッ素歯面塗布剤の方が中性2%フッ素歯面塗布剤よりも、顕著なフルオロアパタイトを主成分とするなフッ化物生成が見られた。中性でもそれらが生成されるが、酸性で反応させた場合、フルオロアパタイトの成分となるCa, PO4イオンが溶出され、それらを再利用してフルオロアパタイトが生成されると説明すべき、追加実験を検討する。理化学研究所NMR研究開発部門では、液体19F- NMR分析は可能とのこと、可溶性のフッ化物の分析を実施できればと考える。特に飲料水に含まれるフッ化物のNMR分析は、過去に報告がないため、新規性がある。特に緑茶、紅茶にはある程度のフッ素が含有するため、可溶性として存在を比較する予定である。 さらに歯質への取り込みも検討できればと考える。これまでの研究結果を総括し、国内学会発表や、国際論文に投稿予定を推進したいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題では、フッ素の効果関連の分析解析技術として、19F- NMR分析は、原子レベルでの、化学理的性状分析を行う上で必要であるが、固体NMRによる解析につき、理化学研究所NMR研究開発部門(NMR応用利用グループNMR先端応用外部共用チーム)の技術的サポートで、高速MASスピン19F- NMR分析が使用できていない。他の外部施設(早稲田大学物性計測センターラボ)を検討し、低速MASで実施しており、結果発表可能か検討中である。必要なら、受託先を早急に探し、受託研究費用として使用したい。該当年度は、コロナ感染予防制限が収束前で、国際学会参加が現地ではなく、多くはWEB開催であったため、旅費申請も必要なく、次年度使用額が生じた理由の一つである。今後は追加実験を進め、これまでの成果をまとめ、発表の機会を増やす所存である。
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