研究課題/領域番号 |
20K09973
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三浦 治郎 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (70437383)
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研究分担者 |
北條 裕信 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (00209214)
清水 真人 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70380277)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖化最終産物 / 歯髄細胞 / 老化 / 異栄養性石灰化 / 象牙質 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
糖化ストレスが組織に及ぼす詳細なメカニズムの解明を行うため、免疫組織化学的手法および分析化学的手法であるwestern blotting法やHPLC、質量分析などを用いて、歯髄内での糖化物質の局在や物質の定量分析、AGEsの分離および抽出を行い関連する物質の動きや歯髄組織への影響を特定ことを目的とした。 2型糖尿病ラットを用いて生体における糖化反応の詳細な分析および免疫組織化学染色を用いた生体反応の分析を行った。以前より血管内への色素流入試験による血管塞栓の観察から糖化による血管損傷が起こっているといった分析を行っていたが、今回免疫電子顕微鏡法による血管内皮細胞や周囲組織にも糖化の影響が及んでいることがわかり、咬合力による歯根周囲への力学シミュレーションを行うことで血管障害の成因の一つに咀嚼時の力が関与している可能性が示唆された。糖尿病ラット23匹に対して歯髄内石灰化が起こる歯種をμCTを用いて調べたところいずれも11週令以上のラットで7割を超えているが特にM2に関して非常に高い頻度で石灰化が出現した。咀嚼時の歯種による負担の違いや力のかかり方などに影響を受けている可能性も考えられる。2型糖尿病ラットの特徴として過食があり、それによる血糖値の上昇と過食そのものの力の影響が重なり根尖周囲の血管損傷および歯髄内の低酸素状態の持続さらには局所的な炎症が起こり歯髄内の環境が悪化が誘発されるという連鎖が本年度の実験より明らかになり、結果的に異栄養性石灰化がおこり歯髄内結石の産生が促進されていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病ラットを用いた発現分子の解析は順調に進んでおり、低酸素マーカー 炎症性マーカーなどの明確な変化が測定されている。さらに、ラットの歯髄内結石の出現の原因に低酸素が影響していることは明確になった。今後は低酸素状態時の血管新生や血管内皮の変性などに注目しての検討を考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、薬剤により糖化作用を変化させることで歯髄に与える影響がどのように変わっていくかを分析していく予定である。生体における糖化現象の応用領域の策定として、基質の糖化修飾による歯髄細胞の石灰化誘導を効果的に行える条件(糖化レベルや細胞・組織要件)を検索し、実験的に有効性を証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、糖尿病ラット及び抗体を用いた免疫組織化学的分析を行う準備段階であり、購入するラット数が若干予定より少なくすんでいるため。今後ターゲットが決まった際に購入を進めていく。現在までの論文投稿を年度末から少し延期したため校正依頼費用などが翌年度分となったため。
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