研究実績の概要 |
歯周組織再生治療法の1つであるMSC移植において、MSCは移植局所に存在する歯周組織構成細胞との直接接触または分泌因子を介した間接接触によって、細胞機能の制御を受ける。さらに、MSCがエクソソームを分泌することにより周囲の歯周組織構成細胞と協調しながら歯周組織再生に至ると考えられる。しかし、歯周組織構成細胞が分泌する因子に関しては、構成要素および移植局所でのMSC細胞機能へ及ぼす影響について未だ不明な点が多い。 本研究では、歯周組織構成細胞分泌エクソソームを含む液性因子が移植されたMSCの移植局所における細胞機能制御に対して重要な役割を果たすことを明らかにするとともに、歯周組織分泌エクソソームおよびMSC分泌エクソソームを応用することによって、歯周組織構成細胞と協調した効果的な歯周組織再生を実現することである。本年度は、前年度に得られた結果を基に、エクソソームを含む歯周組織構成細胞からの液性因子によるMSC細胞機能への影響を解明する上で、歯周組織構成細胞との共培養によってMSCの骨分化が抑制される際にMSCに誘導されるHDAC1およびHDAC2に焦点を当て、両遺伝子の発現調整によるMSC骨分化への影響を検討した。 得られた結果として、1.HDAC1, HDAC2の発現抑制によって、MSCの骨分化が抑制された。2.HDAC1, HDAC2の過剰発現によって、MSCの骨分化が促進された。3.HDAC2と比較してHDAC1は優位にMSC骨分化を制御していることが示唆された。
以上の結果を踏まえ、本課題において、歯周組織構成細胞からの分泌因子により、MSCにおけるHDAC1およびHDAC2の発現・リン酸化および活性制御が影響を受けることで、MSC骨分化が制御されることが明らかとなった。 本研究成果を応用した歯周組織構成細胞と調和の取れた歯周組織再生治療法の確立につながると考える。
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