研究課題/領域番号 |
20K09977
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山田 志津香 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (00363458)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯根象牙質 / コラーゲン架橋 / コラゲナーゼ抵抗性 / ナノバブル水 / ゲニピン |
研究実績の概要 |
今回,象牙質の機械的強度を弱めることなく脱灰する効果がある他,象牙細管への薬剤導入作用があるナノバブル水と天然の架橋剤であるゲニピンの混合溶液をウシ切歯の歯根象牙質に作用させ,歯根象牙質のコラゲナーゼ抵抗性について生化学的手法を用いて検討を行った.まず、ウシ切歯歯根の抜髄を#80まで行った.根尖孔をコンポジットレジンで封鎖後,無作為に5本ずつ,以下の8群に分類した.Group1. 超純水(MQ)群,2. ナノバブル水(NB)群,3. 0.01%ゲニピン(GE)+MQ群,4. 0.1%GE+MQ群,5. 0.5%GE+MQ群,6. 0.01%GE+NB群,7. 0.1%GE+NB群,8. 0.5%GE+NB群.各群の根管内に試薬を添加し,37℃で24時間保管後,全群の根管内に5%コラゲナーゼ溶液を添加して再度37℃で保管した.24時間経過後,根管内溶液をチューブに移送,6N塩酸で加水分解後,溶液中に遊離するヒドロキシプロリン(HYP)濃度を測定した.測定値はone-way ANOVAで検討後,fisherのPLSDテストで多重比較を行った(有意水準5%).各群の遊離HYP濃度は以下の通りであった(単位はμM).;Group1;33.6±2.5,2;31.5±0.4,3;29.1±0.6,4;27.3±0.6,5;26.2±0.2,6;27.0±0.3,7;25.2±0.3,8;24.5±0.5.6つのGE含有群はMQ群やNB群よりも有意に低い濃度を認めた(P<0.05).3つのGE+MQ群と3つのGE+NB群間では有意差を認めなかったがNB含有群がMQ含有群よりも濃度が低い傾向を示した.これはNBによりGEが象牙細管内の深くまで送達後,象牙質内のコラーゲン架橋形成が促進されコラーゲン線維が早期に成熟・安定した結果,歯根象牙質のコラゲナーゼ抵抗性を向上させた可能性が考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コラゲナーゼ抵抗性についての実験は順調に進行したが,歯根の機械的強度の研究が予算面でウシの切歯歯根の十分な確保が困難なため,やや滞っている.
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今後の研究の推進方策 |
現有するウシ切歯歯根を用いて,可及的に,機械的強度の研究に必要な技術を十分に習得し,ウシ切歯購入後の本実験に備える. 同時に,マウス前骨芽細胞を用いたナノバブル水とゲニピンのin vitroでの安全性試験を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大により,国内学会がすべて誌上もしくはweb開催となったため,旅費支出が0となり次年度使用額が生じた.次年度以降,学会が現地開催となった場合,旅費に充てて本研究に関する情報収集に努める.
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