研究課題/領域番号 |
20K09977
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山田 志津香 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (00363458)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゲニピン / ナノバブル水 / 歯根象牙質 / コラーゲン架橋 |
研究実績の概要 |
臨床の場において、抜髄後歯根破折に至る症例にたびたび遭遇する。齲蝕や補綴的要求によりやむを得ず無髄歯となった場合、歯根象牙質の機械的強度を向上させることが歯の延命につながる。蒸留水を用いてナノバブル発生装置により製造されたナノバブル(NB)水は、象牙質の機械的強度を弱めることなく、スメア層を除去する効果がある他、象牙細管内への薬剤導入作用があることが判明している。一方、クチナシ属の果実の抽出物に見られるゲニポシドのアグリコンであるゲニピン(GE)は、急性毒性が低い上に、コラーゲン、ゼラチン、キトサン等に対する天然の架橋剤として研究分野で多用されている。 昨年度のウシ切歯の歯根を用いた実験により、その根管にGE+NB水を作用させたグループでは、コラゲナーゼ供与後、歯根象牙質から遊離されたヒドロキシプロリン濃度が少なかったことから、歯根象牙質改質剤としての有用性が示唆された。しかし、GEはタンパク質中のアミノ基と酸化・重合して青色の高分子を作ることが知られている。GEによる歯の変色作用は審美的観点からその使用の限界を意味する。今回、NB水に総濃度0.01%、0.1%、0.5%のGEを混和させた溶液をウシ切歯根管に作用させ、その変色について観察を行った。その結果、GEを含む溶液を作用させたグループでは濃度依存的に根管が青紫色に変色することが判明した。しかし、総濃度0.01%GE群においては、肉眼ではGEを含まないコントロール群とほぼ変わらない色調であることが明らかとなった。低濃度のGEを作用させた場合、歯根象牙質のコラゲナーゼ抵抗性は高濃度のGEを作用させた場合よりも低かったが、コントロール群よりは有意に高く、変色もほとんど見られなかったことから、低濃度のGEは象牙質改質剤としての臨床的有用性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度中に骨芽細胞を用いてゲニピンとナノバブル水の安全性試験を行う予定だったが、顕微鏡の故障により実験計画の延期が余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
顕微鏡および映像記録装置の購入により、安全性試験および細胞観察を迅速に進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
顕微鏡の故障による実験計画の延期や学会のweb開催により、物品費や出張費の支出額が大幅に減少した。次年度使用額は、顕微鏡用の映像記録装置の購入に充てる。
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