研究課題/領域番号 |
20K09980
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
武市 収 日本大学, 歯学部, 教授 (10277460)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 根尖性歯周炎 / 歯根肉芽種 / Epstein-Barrウイルス / CD79a / LMP-1 / ZEBRA / real-time PCR / 蛍光免疫染色法 |
研究実績の概要 |
難治性根尖性歯周炎患者の根尖病巣組織40例と完全埋伏智歯を抜去した際に摘出した健常歯肉組織5例をコントロールとし、本研究に供試した。根尖病巣組織および健常歯肉組織をヘマトキシリンーエオジン染色し,光学顕微鏡下で病理組織学的に検索したところ,リンパ球やもマクロファージなどの炎症性細胞浸潤に富み,幼弱な毛細血管が観察されるものの上皮を認めない組織32例を歯根肉芽腫と病理診断した。残りの8例は,明瞭な重層扁平上皮が裏層されており,コレステリン空隙を含む肉芽組織を認めたため,歯根嚢胞と診断した。また健常歯肉組織を検索したところ,重層扁平上皮下にわずかなリンパ球を認めた。これらの組織を以下の研究に供した。 供試試料からDNAを抽出し、real-time PCR法で解析を行ったところ、全ての歯根肉芽腫からEpstein-Barrウイルス(EBV)を検出したが、健常歯肉組織からは一切検出できなかった。また、EBVの潜伏感染マーカーであるLMP-1またはEBVの再活性化マーカーであるZEBRAの抗体を用い,B細胞マーカーであるCD79aの抗体を用いた二重蛍光免疫染色法を行ったところ、歯根肉芽腫組織に浸潤したB細胞からこれらのタンパク発現を認めた。なお、健常歯肉組織からはこれらのタンパク発現は認められなかった。 以上のことから,歯根肉芽種中にEBVが感染しており,潜伏性を示すものと再活性化を示すものとが混在していることが明らかとなった。また,健常歯肉組織からEBVが検出されなかったことから,EBVが歯根肉芽種中の炎症に関与する可能性が示唆された。そこで,次年度以降は継続研究として,再活性化に関与するメカニズムの解明を行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
供試試料である根尖病巣組織および健常歯肉組織を採取することができた。解析方法について熟知していることから,試料の解析が遅滞なく行われている。現時点で問題となる事象は発生していない。
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今後の研究の推進方策 |
歯根肉芽種にEBVが感染しており,炎症に関与している可能性が示唆された。試料数を増やすことによって,この結果の信ぴょう性を高めることが可能となるため,引き続いて試料の採取を行っていく。また,EBVが潜伏感染しているものと再活性化しているものとが混在していることから,再活性化のメカニズムを明らかにするため,再活性化を誘導する要因について検索する予定である。 潜伏感染しているEBVはヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(HDACインヒビター)によって再活性化するため,HDACインヒビターと潜伏感染しているEBVとの関連について検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画的に使用したところ,端数が生じた。繰越金と令和3年度助成金と合わせて,試料採取用器具,病理組織学的検索および免疫組織学的検索用試薬,遺伝子検出用試薬および細胞培養用試薬の購入に使用する予定である。
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