研究課題/領域番号 |
20K09980
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
武市 収 日本大学, 歯学部, 教授 (10277460)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 難治性根尖性歯周炎 / 歯根肉芽種 / エプスタインーバーウイルス / Fusobacterium nucleatum / 酪酸 / BZLF-1 / ルシフェラーゼアッセイ |
研究実績の概要 |
難治性根尖性歯周炎と臨床診断された患者35名から根尖病変組織を,また水平埋伏智歯を抜去した患者6名から健常歯肉組織をそれぞれ摘出し,本研究に供した。なお,本研究は日本大学歯学部倫理委員会の承認(BP16D026)を得ており,試料採取の賛同を得た時のみ同意文書に署名を頂いた。組織を3分割したのち,それぞれパラフィン切片作製用,DNAおよびRNA抽出用に分けて保存した。7μmのパラフィン切片を作製した後,ヘマトキシリン・エオジン染色を行い,光学顕微鏡下で幼弱な毛細血管と炎症性細胞浸潤に富む組織を歯根肉芽種と病理診断し,以後の研究に供試した。 供試試料のDNAを用いてreal-time PCR法を実施し,Epstein-Barrウイルス(EBV)および難治性根尖性歯周炎関連細菌であるEnterococcus faecalis,Candida albicans,Fusobacterium nucleatum,Prevotella intermediaおよびPorphyromonas gingivalisの遺伝子を検出したところ,歯根肉芽種からEBVと5菌種の存在を確認した。一方,健常歯肉組織から検出数は少ないものの,これらの細菌が検出されるものもあった。なお,EBVおよびE. faecalisは検出されなかった。次に,これら5菌種の培養細胞中の酪酸産生量を高速液体クロマトグラフィーで定量したところ,F. nucleatumのみ酪酸を産生しており(23.511±0.831mM),他の菌種からは検出されなかった。 BZLF-1遺伝子のプロモーター領域をルシフェラーゼ発現ベクターに遺伝子導入し,上記5菌種の培養上清を用いて,ルシフェラーゼアッセイを行ったところ,F. nucleatumはBZLF-1ルシフェラーゼ活性を示したが,その他の菌種は活性を示すことはなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍であっても,供試試料である難治性根尖性歯周炎病変組織と健常歯肉組織を必要数採取することができた。また,本研究を遂行する上での知識と技術を有しているため,問題なく予定通りの解析ができた。一部,海外から輸入しなければならないreal-time PCR用試薬などの入手が困難な時期があったが,早めに発注し,手元に来る間は試料の採取と処理を行うなど,時間のロスがないよう配慮した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度に引き続き,歯根肉芽種および健常歯肉組織の採取を行い,検索試料数の増加を図る。また,歯根肉芽種および健常歯肉組織中のEpstein-Barrウイルス(EBV)および難治性根尖性歯周炎関連細菌であるEnterococcus faecalis,Candida albicans,Fusobacterium nucleatum,Prevotella intermediaおよびPorphyromonas gingivalisの5菌種について,DNAの検索を行う。加えて,これら5菌種の培養上清を用いたBZLF-1ルシフェラーゼアッセイを行い,令和3年度に得られた結果の検証を行う。 令和3年度の研究により,Fusobacterium nucleatumが酪酸を産生することにより,潜伏感染したEBVを再活性化する可能性を示唆する結果が得られたため,再活性化したEBVによる炎症性サイトカイン発現誘導能を検索することで,EBVが根尖病変内でどのような炎症を誘発するのか,を検索する所存である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画的に研究費を使用してきたが,消耗品が予定より安くすんだため,端数が生じた。繰越金と令和4年度助成金と合わせて,リン酸緩衝食塩液などの試料調整用薬剤,ヘマトキシリン・エオジン染色液などの病理組織学用試薬,炎症性サイトカインの発現を検索するための抗体と染色キットなどの免疫組織学的検索用試薬とELISAキット,real-time PCR用PCRプライマーとPCR反応用キットなどの試薬およびウシ胎児血清やαMEMなどの細胞培養用試薬などの購入に使用する予定である。
|