難治性根尖性歯周炎患者の根尖病変組織45例と完全埋伏智歯を抜去した際に摘出した健常歯肉組織8例をコントロールとし、本研究に供試した。なお,本研究は日本大学歯学部倫理委員会の承認(BP16D026)を得て実施した。根尖病変組織および健常歯肉組織をヘマトキシリンーエオジン染色し,病理組織学的に歯根肉芽腫と診断した31例を以下の研究に供試した。なお,残りの14例は,歯根嚢胞と診断し,本研究からは除外した。 供試試料からDNAを抽出し、real-time PCR法で解析を行ったところ、全ての歯根肉芽腫からEpstein-Barrウイルス(EBV)を検出したが、健常歯肉組織からは一切検出できなかった。難治性根尖性歯周炎関連細菌を検索したところ,Fusobacterium nucleatumが最も多く検出され,BZLF-1発現と高い相関性を示した(r=0.6656,P<0.001)また、EBVの潜伏感染マーカーであるLMP-1またはEBVの再活性化マーカーであるZEBRAの抗体を用い,B細胞マーカーであるCD79aの抗体を用いた二重蛍光免疫染色法を行ったところ、歯根肉芽腫組織に浸潤したB細胞からこれらのタンパク発現を認めた。なお、健常歯肉組織からはこれらのタンパク発現は認められなかった。F. nucleatumの培養上清を用いてBZLF-1ルシフェラーゼアッセイを行ったところ,濃度依存的に活性が上昇した。Daudi細胞にF. nucleatumの培養上清を添加したところ,BZLF-1とZEBRAの発現が誘導された。 以上のことから,歯根肉芽種中にEBVが感染しており,潜伏性を示すものと再活性化を示すものとが混在していることが明らかとなった。また,健常歯肉組織からEBVが検出されなかったことから,EBVが歯根肉芽種中の炎症に関与する可能性が示唆された。
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