歯周病の炎症部位に集積する末梢血好中球は、細菌の貪食を担いながら、病巣部の状態に応じて細菌由来の酵素や組織破壊産物および炎症メディエーターなど、他の生化学成分と共に歯肉溝滲出液に含有され、口腔内に至る。本研究では、そのGCFに含まれる好中球に発現するNETsの状態から歯周組織の病態を探知する可能性を検索した。 過去3ヶ月間各種薬剤の服用経験のない、歯周組織が健康な被験者の協力のもと、まず末梢血好中球におけるNETs発現に関する基礎的な解析を行った。好中球をP.gingivalis由来LPS(以下 PG-LPS)およびEcherichia coli由来LPS(以下 EC-LPS)によって刺激後、レーザー共焦点顕微鏡観察、NETs quantification assay、ELISAによりNETs発現状態を検索したところ、刺激時間および濃度依存的なNETs発現誘導が観察された。さらに、P. gingivalis由来LPSの受容体である Toll Like Receptor(TLR)2および4のNETs発現における役割について検討したところ、PG-LPSはTLR2および4を介して、EC-LPSはTLR4を介してNETs を発現させることが示された。 これは歯周組織では歯周病原細菌のLPSが好中球に作用し、好中球が細菌を捕獲するためにNETsを発現させていることを示唆するもので、NETs発現レベルから局所の歯周病の病態を類推できることが示された。 最終年度では、歯周組織の健常者と歯周病患者の歯肉溝滲出液(GCF)中の好中球を採取し、NETs発現状態と病態との関連の検討を行っており、現在まで、歯周組織の健常者の好中球ではNETs発現レベルが低いことが示されており、論文化を進めている。
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