研究実績の概要 |
従来から接着性レジンセメントは、歯質への接着性能とその耐久性の向上を主眼に開発されてきた。化学重合と光重合を組み合わせたデュアルキュアタイプが現在では主流であり、近年ではその信頼性は非常に高く、臨床でも間接法修復だけでなく、幅広く応用されている。しかしながら、従来からの「仮着」「本着」の概念では、接着性レジンセメントを使用しての修復物の装着は基本的には不可逆的なものであり、脱離ならびに破折防止への信頼性向上は望めるものの、修復物の部分的な破折や、マージンからの二次う蝕発生時には、破壊的な方法で修復物全体を撤去せざるを得ないのが現状である。申請者らの研究により開発された、光分解性PRX架橋剤を用いることで、可視光照射にて硬化し、紫外光照射で分解するレジン硬化体を作製する技術を応用し、着脱が可能な新規接着性レジンセメントの基礎技術を開発することが本研究の目的である。本研究においては、光分解のためのUV-LED光照射器の検討が不可欠である。UVC領域(波長280nm以下)での光分解性能はすでに検討しているが、臨床応用を進めるためより安全な波長域のUV-LED光照射器を用いる必要がある。 研究協力体制を築いている企業から、試作UV-LEDの提供を受け、電源装置や遮蔽環境下での光照射が可能な実験用の照射装置の確立を試みた。具体的には265,285,300,340nmの波長を持ったLEDを試作し、光源からの距離(ワーキングディスタンス、WD)における照度計測を実施した。 また、UV-LED装置の他用途への応用の検討として、歯質漂白剤との併用や、歯冠修復材料表面のコンタミネーションの除去などの検討を加えている。
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