研究課題/領域番号 |
20K09987
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
槇田 洋二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究部門付 (80357988)
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研究分担者 |
吉原 久美子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (90631581)
長岡 紀幸 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (70304326)
杉浦 悠紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (70755040)
吉田 靖弘 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (90281162)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イオン交換 / 無機イオン交換体 / 抗菌 / 脱灰抑制 |
研究実績の概要 |
本研究では、二次う蝕や誤嚥性肺炎等の疾患リスクを低減する歯科医療材料の開発を目指し、層状化合物の層間に抗菌性と脱灰予防効果を付加する機能成分を担持した歯科材料用フィラーを開発する。新規フィラーの結晶構造や抗菌・脱灰抑制成分の溶出性を調べるとともに、フィラーをボンディングレジンに添加し、ミュータンス菌・カンジダ菌に対する抗菌性を評価する。また、抗菌・脱灰抑制成分のリチャージについて検討し、持続的な抗菌性と脱灰予防効果を併せ持つ歯科接着材料として実用化するための基礎的知見を集積する。 令和2年度は、フッ化セチルピリジニウム(CPF)担持フィラーの合成および合成条件の検討を行った。CPF担持フィラーの合成においては、抗菌・脱灰抑制成分となるCPFは市販されていないため、特許出願済みの方法を用いてCPF溶液を調整した。CPFの担体には層状リン酸ジルコニウムおよび層状リン酸チタンの微粉体を使用した。層状化合物の中性における陽イオン交換量のカタログ値に対するCPF量のモル比が1倍、3倍、6倍、10倍になる条件で、CPF溶液中に担体を添加・撹拌してCPFの層間担持を試み、引き続いて、ろ過・水洗・乾燥して固形物として回収した。粉末エックス線粉末回折装置を用いて反応前後の結晶構造変化を調べたところ、いずれの担体を用いた場合も層間隔が大きく拡張されていることが分かった。また、反応物の蒸留水中におけるCPFの溶出挙動を予備的に調べたところ、溶液中にセチルピリジニウムイオンとフッ素イオンの両方が検出された。これらの結果より、層間にCPFが担持されていることが明らかとなり、計画通りCPF担持フィラーを合成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のキーマテリアルとなるCPF担持フィラーを合成できた。また、開発した一部のCPF担持フィラーを用いて蒸留水中におけるCPFの溶出挙動を評価でき、他のフィラーにおいても同様な手法で評価できる見込みを得た。以上の理由により、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成3年度以降は、当初の計画通り、「フィラーの微細構造解析」、「フィラーおよびフィラー添加ボンディングレジンのCPF溶出性とリチャージ特性」、「フィラーおよびフィラー添加ボンディングレジンの抗菌性」、「フィラー添加ボンディングレジンの接着強度」を検討する。「フィラーの微細構造解析」においては、CPF担持フィラーの結晶構造を明らかにするとともに、担体層間へのCPF担持過程を明らかにする。「フィラーおよびフィラー添加ボンディングレジンのCPF溶出性とリチャージ特性」については、フィラー添加ボンディングレジンを調整するとともに、フィラーおよびフィラー添加ボンディングレジンのCPF溶出挙動およびリチャージ特性を明らかにする。「フィラーおよびフィラー添加ボンディングレジンの抗菌性」については、ミュータンスおよびカンジダ菌に対する抗菌性を評価する。「フィラー添加ボンディングレジンの接着強度」については、ボンディングレジンへのフィラー添加量と接着強さの関連性を明らかにする。 上記で得られた知見に基づき、持続的な抗菌性と脱灰予防効果を併せ持つ歯科接着材料として好適なCPF担持フィラーの合成条件およびボンディングレジンへの添加量を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において、異なる条件でのCPF担持フィラーの合成に注力した。そのため、CPF担持フィラーからのCPF溶出挙動の検討が、1サンプルのみにとどまったため、未使用額が生じた。R3年度以降に、残りのサンプルのCPF溶出挙動を調べるため、その費用に充てることとしたい。
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