研究課題
口腔顎顔面領域の腫瘍切除などに伴う顎骨の大規模な欠損の修復は、その3次元的な形態の付与と咀嚼機能の改善のため、再建材料は未だに血管柄付き骨移植など、自家骨に頼らざるを得ないのが現状であるが、自家骨採取に伴う手術侵襲は極めて大きく、患者には大きな負担となっている。一方人工骨を用いた方法は、インプラント周囲の歯槽骨に応用可能だが、大規模欠損への応用は困難で、低侵襲かつ自家骨に置き換わる再建方法の確立は喫緊の課題である。申請者はリン酸オクタカルシウム(Octacalcium phosphate: OCP)に着目し、OCPとコラーゲンとの複合体(OCP/Collagen)の優れた骨再生能を国内外で報告してきた。OCP/Collagenは東洋紡(株)との共同開発により、企業主導の治験を経て2019年5月厚労省の製造販売の承認を得た (製品名:ボナーク)。OCP/Collagenは従来の骨補填材料を凌駕する骨再生能を有し、顎骨再建への応用が期待されているものの大規模な顎骨再建においては更なる改良が必要である。本研究では、大規模な骨欠損部にOCP/CollagenとiPS細胞を組み合わせた担体を応用することに着目し、ラット臨界骨欠損モデルを用いて、OCP/CollagenとiPS細胞による骨再生能を検討し、臨床応用に向けた手法の確立を目的とした。
3: やや遅れている
本研究の最大の特徴はマウスiPS細胞を用い、in vitroでOCP/ColとiPS細胞を培養して、iPS細胞の骨芽細胞様細胞への分化能を、アルカリフォスファターゼ活性やアリザリンレッド染色で評価するものであるが、マウスのiPS細胞の培養系がうまくいかず、in vitroにおける実験ができなかったことが最大の理由である。
今年はin vitroの研究とin vivoの研究を同時に進行することで、2020年の遅れをカバーすることができると考えている。マウスiPS細胞の培養については、我々の研究室だけでなく、研究分担者の江草および鈴木の研究室で同時に行うことで、よりよい培養条件を検索する予定であり、すでにiPS細胞の培養についてはある程度の目処がついているのでin vitroでのOCP/ColによるiPS細胞の骨芽細胞様細胞への分化能の評価については問題なく実験を遂行できると考えている。またin vivoの研究においてもiPS細胞の培養系が確立されていれば、免疫不全ラットに骨欠損を作る実験は先行研究で行なっているので1年で実験を遂行するのは可能であると考えている。
COVID-19により、予定していた国際学会が全てキャンセルになり、旅費の使用がほとんどなかったため。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件)
Tissue Engineering Part A
巻: 15 ページ: 1-11
10.1089/ten.tea.2020.0150
J Tissue Eng Regen Med
巻: 14 ページ: 99-107
10.1002/term.2969
J Tissue Eng
巻: 11 ページ: 1-15
10.1177/2041731419896449
Heliyon
巻: 6 ページ: 1-6
10.1016/j.heliyon.2020.e03347
Dental Diamond
巻: 45 ページ: 100-105