研究課題/領域番号 |
20K09990
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
山下 仁大 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (70174670)
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研究分担者 |
野崎 浩佑 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (00507767)
橋本 和明 千葉工業大学, 工学部, 教授 (90255159)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | β-TCP / 表面電荷 / カルシウム欠損 |
研究実績の概要 |
非吸収性のハイドロキシアパタイト(HA)に対してβ-リン酸三カルシウム(β-TCP) は生体内で自家骨に置換される利点を持つため歯科のみならず整形外科においても人工骨として広く用いられている.しかしながら臨床応用されているβ-TCP は吸収速度が速く生体内で骨置換の前に力学強度が低下する欠点をもつ.本研究では電気分極処理による超高密度表面電荷をβ-TCPに誘起することにより,β-TCPの優れた骨伝導能を保持しながら過度の吸収性を抑制し自家骨への置換速度を制御し,同時に自己組織化(骨形成)を促進し,緩やかな生体吸収を有するβ-TCP骨充填材料の開発を目指す.表面電荷の誘起にはセラミックス内部での双極子モーメントの制御が必須である.本研究では,β-TCPのCaイオン欠損量を制御するために,様々な濃度のナトリウムイオンの固溶体(Na-β-TCP)を作製した.結晶構造解析とその精密化の結果より,ナトリウムイオン量の増加に伴い,Ca欠損量が低下することが明らかとなった.電気的特性を評価したところ,加熱によりNa-β-TCPの交流電気伝導率σACが増加した.また,Naイオン固溶量増加に伴い交流電気伝導率σACは低下した.また,それぞれ試料を電気分極処理により分極し,蓄積電荷量を熱刺激脱分極電流測定により計測したところ,Ca欠損量の増加に伴い,蓄積電荷量が低下することが明らかとなった.このことは,超高電荷密度を有するβ-TCPを作製するための材料設計の指針となることが示唆される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルシウム欠損量を制御する為に, Naイオン固溶量の異なるNaイオン固溶β -TCP(Na-β-TCP)を固相反応法により合成した.XRD測定結果及びFT-IR測定結果より作製した焼結体はβ-TCP結晶構造の単相であった.また, Na-β-TCPの格子定数変化はNaイオン仕込み量増加に伴い,c軸長の縮小が認められ,既往の報告と同様の傾向を示した.さらに,ICP発光分析により,作製したNa-β-TCPは0.00-7.64 mol%のNaイオンが固溶しており,Naイオン仕込み量増加に伴い,Naイオン固溶量増加を認めた.結晶構造の精密化の結果,NaイオンはM4サイトに固溶することが明らかとなった.交流インピーダンス測定の結果,Na-β-TCPは温度上昇に伴い,交流電気伝導率σACが増加した.また,Naイオン固溶量増加に伴い交流電気伝導率σACは低下した.作製した試料を白金にてスパッタし,400℃,0.65V/mmで電気分極処理を行った.蓄積電荷量の測定として熱刺激脱分極電流測定を行い,表面電荷を評価した.TSDC測定の結果,Na-β-TCPの蓄積電荷量及び電流密度はNaイオン固溶量増加に伴い,減少傾向にあることが示された.以上より,M4サイトのカルシウム欠損が電気分極による誘起双極子モーメントの起点であると示唆された.以上より,β型リン酸三カルシウムの分極能は,カルシウム欠損がその主要な役割を果たしていると考えられる.そのため,Naイオン固溶によりNa-β-TCPの分極能が制御可能であり,構造的安定性が向上することが示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
β -TCPのバルク体を電気分極処理すると負に帯電したN面と正に帯電したP面を生ずる。これらの面における骨芽細胞や破骨細胞の活性と骨形成に及ぼす影響を評価する。評価には,マウス頭蓋骨由来MC3T3-E1細胞およびマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞を使用し,一定期間試料上で細胞培養を行う.それぞれ細胞増殖能の評価と,骨芽細胞分化能,石灰化能,骨吸収能を評価する.生体吸収性にはβ-TCPの化学的溶解性が強く相関すると考えられる。また骨形成モデルとしてリン酸およびCa2+イオンを含む溶液におけるアパタイトの析出を用いられる。これらを勘案し、ハンクス液中における溶出及び析出挙動に対する表面電荷の効果を解析する。 実験動物には、骨補填材の評価として用いられているWistarラットを使用する。Struillouらの動物実験に関わる報告を参考に(Struillou et al., Open Dent J, 2010)、歯槽骨欠損モデルを作製し、作製した試料を充填する。また,大腿骨内側上顆に骨欠損を作製し,試料を充填する.埋入一定期間ごとに、マイクロCTによる骨形成評価と、樹脂標本による組織学的評価を行う。 形状の異なる超高密度表面電荷を誘起したβ-TCPを生体内に移植し、バルク体における骨結合、中心部の孔内骨増生、ナノ粒子間における新生骨形成の促進が生じることを検証する。これが成功すれば、これまで類を見ない、自家骨へ早期に置換される、自己組織化促進型人工骨が開発される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,新型コロナ感染症の拡大に伴い,当初計画していた抗菌性評価や生体安全性評価の進捗が遅れたため,次年度使用額が生じた.本内容は次年度に行うこととする.
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