研究課題/領域番号 |
20K09995
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
建部 廣明 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (40638293)
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研究分担者 |
建部 二三 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (10534448)
志茂 剛 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (40362991)
入江 一元 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70223352)
細矢 明宏 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70350824)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯根膜細胞 / Gli1 / Shh |
研究実績の概要 |
口腔インプラント治療においては、インプラント体を埋入するための骨量確保が重要であり、近年では骨芽細胞分化機構を応用した骨再生の取り組みも行われている。歯根膜に存在する幹細胞マーカーとしてGli1陽性細胞が報告されている。Gli1はSonic hedgehog(Shh)の下流因子として知られているが、骨芽細胞分化とどのような関連があるかは明らかにされていない。歯槽骨を形成する骨芽細胞は、組織幹細胞から分化すると考えられる。しかし、歯根膜に存在する組織幹細胞における維持調節機構は不明な点が多い。我々はこれまで、フェイトマッピング解析法を用い、歯根膜組織の未分化細胞が転写因子Gli1を発現し、幹細胞特性を有することを見い出した。しかしGli1は骨芽細胞分化とどのような関連があるかは明らかにされていない。また、Gli1の上流にはSonic hedgehog(Shh)をはじめとする様々な因子が報告されているが、それらが骨芽細胞分化にどのような影響を与えているか明らかにされていない。そこで、本研究では、Gli1陽性細胞の特性を理解するため、Gli1因子の上流に存在する因子と骨芽細胞分化との関連について検討した。今年度は、Gli1の上流に位置する B cell-specific moloney murine leukemia virus integration site 1(Bmi1)と骨芽細胞分化との関連を実験動物を用いて検討し、Bmi1が骨芽細胞分化に関係することを論文発表した。また、Shhと骨芽細胞分化との関係については、抜歯後のShh-CreERT2-Tomatoマウスを用いた検討を行い、学会発表を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯槽骨を形成する骨芽細胞は、組織幹細胞から分化すると考えられる。本研究者らはこれまでに、歯槽骨再生動物実験モデルを作製し、歯根膜に存在するGli1陽性細胞が骨芽細胞に分化することを明らかにした。そこで本研究では、Gli1の上流因子のひとつとして知られているShhによる骨芽細胞分化調節因子および歯根膜でのGli1発現維持メカニズムを解明することを目的とした。当該年度は、Gli1の上流因子であるShhがタモキシフェン投与によりShh陽性細胞が赤色に発光するマウス(Shh-CreERT2-Tomatoマウス)を使用し、上顎臼歯抜去後の抜歯窩におけるShh陽性細胞の存在を確認し学会報告を行なった。 この結果は、Gli1陽性細胞の骨芽細胞への分化過程にShhが関連していることを示唆する。また、本研究者らはGli1陽性細胞が赤色に発光するマウス(Gli1-CreERT2-Tomatoマウス)を用いた先行研究により、抜歯窩におけるGli1陽性細胞の存在を確認している。以上の結果から抜歯窩の骨再生時においてShhとGli1陽性細胞が存在することから、抜歯窩における骨形成にShhやGli1が関係していることを見出した。さらにGli1の上流に位置すると報告されている B cell-specific moloney murine leukemia virus integration site 1(Bmi1)の陽性細胞を骨芽細胞分化過程において確認した。Bmi1が骨芽細胞分化過程に関連するという報告されていなかったことから、Bmi1が骨芽細胞分化に関連する可能性が示唆されることを論文発表した。以上のことから本研究課題は順調に遂行中であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
歯槽骨を形成する骨芽細胞は、組織幹細胞から分化すると考えられる。しかし、歯根膜に存在する組織幹細胞における維持調節機構は不明な点が多い。これまでに、歯根膜に存在するGli1陽性細胞が骨芽細胞に分化することを明らかにした。本研究計画では、Gli1の上流因子のひとつとして知られているShhによる骨芽細胞分化調節因子および歯根膜でのGli1発現維持メカニズムを解明することを目的とし、Gli1陽性歯根膜細胞のShhによる骨芽細胞分化調節因子および歯根膜でのGli1発現維持メカニズムの解明、Gli1陽性歯根膜細胞にShhを遺伝子導入し歯槽骨欠損部に応用し、生物学的な知識に基づいた歯槽骨再生法の開発を遂行中である。これまでの研究内容は、実験動物を用いて、Gli1陽性細胞とShh陽性細胞が骨芽細胞の分化に関連していることを見出した。次年度は、得られた結果を元に、Gli1たShh陽性細胞を選択的に死滅させることができるマウス(Shh-CreERT2/DTA;Gli1-GFPマウス)を用いて、Gli1やShhが存在しない場合の骨芽細胞分化過程への影響やShh発現細胞がGli1陽性歯根膜幹細胞の維持および誘導に重要であることを証明する。さらにShhを遺伝子導入したGli1陽性細胞をを歯槽骨欠損部に応用し、Gli1陽性細胞の骨芽細胞への分化の可能性についての検討を行う。さらに得られた結果を基に学会発表と論文執筆を行う予定である。
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