研究実績の概要 |
超高齢社会において、長期にわたる咬合機能の維持はQuality of Life (QOL)の向上に不可欠であり、予知性の高い歯周組織再生療法の開発が急務となっている。歯槽骨を形成する骨芽細胞は、組織幹細胞から分化すると考えられる。しかし、歯根膜に存在する組織幹細胞における維持調節機構は不明な点が多い。我々はこれまで、フェイトマッピング解析法を用い、歯根膜組織に歯槽骨を再生する細胞が存在することを明らかにし、さらにGli1の上流因子であるSonic hedgehog(Shh)が骨再生に寄与することを示したた。 本研究では、Gli1陽性細胞を歯根膜に存在する幹細胞マーカーと予想しGli1陽性歯根膜幹細胞のShhによる維持調節機構を明らかにすることを目的とした。そこでまず歯根膜に存在するGli1陽性細胞の幹細胞性を持つことを初年度に見出した(J Oral Sci, 62 299-305, 2020)。次に骨芽細胞分化過程において発現する因子を検索した。骨芽細胞分化因子は、Runx2やOsterixが知られているが、新たにBmi1が骨芽細胞分化因子である可能性を示した(ANAT REC, 305 1112-1118 2021)。また、最終年度では、骨芽細胞分化過程においてGli1とShhがどのように関連しているのかについて歯根膜のGli1陽性細胞が赤く光る遺伝子改変マウスを用いて検索した(Bone, 166 116609-116609, 2022)。期間全体を通じては、歯根膜幹細胞から骨芽細胞へと分化していく過程で、ShhまたはGli1陽性細胞がどの段階で出現するのかを検索し、論文のほかに第63、64回歯科基礎医学会学術大会および、第127回日本解剖学会総会・全国学術集会において発表を行なった。
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