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2021 年度 実施状況報告書

骨細胞における核膜構成タンパクlamin Aの役割と相互作用を示す新規因子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 20K09999
研究機関日本大学

研究代表者

高橋 富久  日本大学, 歯学部, 教授 (40246905)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード骨細胞 / 骨芽細胞 / 細胞分化 / Lamin A / 細胞内シグナル分子
研究実績の概要

骨細胞株化細胞であるMLO-Y4にlaminAを過剰発現させた細胞株のY4-lamin Aとベクターのみを発現させたY4-Wtを使用してreal-time PCRとWestern blot法によってBMP,TGF,IGFおよびFGFの発現を調べた結果,BMP-1,-2,-6の発現はY4-lamin Aの方がY4-Wtよりも高い発現レベルを示した。Wnt/β-cateninシグナル関連分子の発現についてはaxin,GSK-3β,Wntおよびβ-cataninの発現が増加した。しかしながら,Wnt/β-cateninの古典的経路に含まれているPLC,PKCおよびカルシニューリンの発現およびリン酸化にはY4-lamin AとY4-Wtの間には差は認められなかった。β-cateinの遺伝子プロモター領域への結合能力について調べた結果,Y4-lamin Aで高い値を示した。次に破骨細胞の分化および活性化に必要なOPG,RANKL,M-CSF,TNF-α,IFN,IL-1,-6,-7,-8,-11,-15,-17,-23,-34の発現について調べた結果,Y4-lamin AはY4-WtよりもOPGとIL-6の発現レベルが増加した。続いて細胞内シグナル分子のERKとJunDリン酸化の違いについて調べたところ,Y4-laminAとY4-WtどちらもERKとJunDのリン酸化は認められたが,そのレベルに違いは見られなかった。LaminAは老化関連因子のNRF2を不活性化することから,Y4-laminAとY4-WtにおけるNRF2の発現とリン酸化について検討した。しかし,両細胞間には顕著な変化は認められなかった。一方,すでに作成してあるMLOY4にlaminAをノックダウンさせた細胞のNRF2の発現について調べたところ対照群に比較してNRF2の発現の軽度な増加が認められた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度は前年度作成したY4-laminAとY4-Wtとの間に発現している,骨分化関連因子,Wnt/β-cateninシグナル関連因子,破骨細胞分化関連因子,およびlamin Aの発現によって不活性化される老化関連転写因子の発現についてreal-time RT-PCRとWestern blot法を使用して検討を行った。このうちY4-Wtに比較してY4-lamin Aにおいて強く発現した因子はBMP-2とBMP-6,β-cateninであり,細胞内で機能するERKやJunDのリン酸化にはlamin Aの発現は直接関与していないことが明らかになった。この結果は,MLO-Y4におけるlamin Aの発現がBMP-2あるいはBMP-6を介してMLO-Y4の石灰化を促進することを示したもので,そこには間接的にWnt/β-cateninシグナルも関係していることが示唆された。また,β-cateninについては当教室所有のβ-catenin結合配列を有したTOP/EGFベクターを使用したプロモーターアッセイによって強い活性が見られたことから,lamin Aはβ-cateninを介して,その下流で機能している様々な分子の発現促進に関係していることが明らかになった。しかしながら,p38やMAPKシグナル分子についての活性化パターンについては現時点では調べていなく,今後,適切な抗体を利用して検討を行う予定である。NRF2についてはデーターの再現性を取る必要があるが,laminAノックダウン細胞で発現が軽度に促進したことはlaminAとNRF2の発現を検討する上で極めて重要であると考える。また,この結果は,laminAの発現抑制が老化の促進と密接に関係していることが考えられた。

今後の研究の推進方策

申請研究内容とは方向性がやや異なるが,今後はlamin Aの発現抑制とMLO-Y4の細胞周期の関係,およびβ-galactosidase,lamin B1,老化分泌表現型(SASP)などの発現とp16,p21,p56の発現とリン酸化について検討する。Y4-lamin AとY4-Wtについては,昨年度検討できなかった,細胞内シグナル分子の発現とリン酸化について継続して検討を続ける。また,β-cateninの核内移行について免疫染色によって詳細に調べるとともに,β-cateninの下流として考えられているTcf,PPARd,lymphoid enhancer D1,Twinなどの発現とlamin Aとの相互作用について検討を加える。同時に抗Wnt抗体や抗BMP-2,-6抗体を使用した阻害実験を通して,lamin Aの発現とWnt/β-cateninシグナルとの関係について明らかにする。さらにY4-lamin AとY4-Wtの遺伝子発現の違いを網羅的に検討するために,マイクロアレイを利用した解析を実施する。それぞれの細胞から抽出したRNAを試料として,タカラに委託しSurePrint G3 Mouse Gene Expression 8x60K v2システムを使用して解析する。各対象群の遺伝子発現パターンに比較して有意に発現の変動が認められたものについて再度,遺伝子・タンパクレベルで発現量の変化を詳しく調べ,lamin Aの発現をコントロールしている因子,あるいはlamin Aの下流で機能していると考えられる核内タンパクを同定し,骨細胞への分化,成熟および石灰化メカニズムに関わる研究の基盤とする。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] p53 deficiency promotes bone regeneration by functional regulation of mesenchymal stromal cells and osteoblasts2022

    • 著者名/発表者名
      Nagashima T, Ninomiya T, Nakamura Y, Nishimura S, Ohashi A, Aoki J, Mizoguchi T, Tonogi M, Takahashi T
    • 雑誌名

      J Bone Miner Metab

      巻: 40 ページ: 434-447

    • DOI

      10.1007/s00774-022-01314-w

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 転写因子TFAP2Eの発現抑制が誘導する口腔扁平上皮癌細胞の遺伝子発現変化2022

    • 著者名/発表者名
      酒井嶺,藤原恭子,永島利通,清水なつ生,大橋晶子,佐藤秀一,本吉 満,外木守雄,髙橋富久
    • 雑誌名

      日大歯学

      巻: 96 ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] セピアプテリンの末梢投与による脳内セロトニン代謝回転の亢進2022

    • 著者名/発表者名
      大橋 晶子,永島 利通,酒井 嶺,外木 守雄,佐藤 秀一,髙橋 富久
    • 雑誌名

      日大歯学

      巻: 96 ページ: -

    • 査読あり
  • [学会発表] 転写因子TFAP2Eは歯肉がん細胞のM期進行の制御に関与する2022

    • 著者名/発表者名
      藤原 恭子,酒井 嶺,高橋 富久
    • 学会等名
      第126回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] 歯根膜leptin receptor陽性細胞による骨代謝調節機能2021

    • 著者名/発表者名
      中村純基,西村調,二宮禎,髙橋富久,本吉満
    • 学会等名
      第80回日本矯正歯科学会学術大会
  • [学会発表] 転写因子 TFAP2E は口腔癌細胞の細胞周期進行における G2/M 遷移の制御に関与する2021

    • 著者名/発表者名
      藤原 恭子,酒井 嶺,高橋 富久
    • 学会等名
      第63回歯科基礎医学会学術大会

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公開日: 2022-12-28  

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