研究課題/領域番号 |
20K10000
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
寺島 達夫 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (20114770)
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研究分担者 |
大井田 新一郎 鶴見大学, 名誉教授, 名誉教授 (10114745)
山本 竜司 鶴見大学, 歯学部, 講師 (20410053)
唐木田 丈夫 鶴見大学, 歯学部, 講師 (40367305)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯根膜形成 / 器官培養法 / 分化誘導 |
研究実績の概要 |
歯胚構成成分として、顎骨骨膜由来成分を含まない胎生16日齢のマウス臼歯と、歯胚の最外層をなす歯小嚢に骨膜由来成分が付着した胎生17.5日齢以降のマウス臼歯を用いて、6~10週間の長期間器官培養法をおこなうと、歯根形成が認められことから、器官培養した歯根の歯周組織形成における分化能の比較をおこなった。さらにマウスの胎生17.5日齢以降の歯胚をもちいた長期間器官培養法では、骨膜由来の骨芽細胞の増殖が優勢と成り、歯根の正常な発育を阻害することが予想されることから、歯胚の器官培養系に異所性骨形成を抑制するRapamycinを添加し、形成された歯根の歯周組織を組織学的に観察して、歯周組織形成への影響を検討した。 胎生16日齢のマウス臼歯歯胚の長期間器官培養法では形成された歯根の表面にはセメント質および歯根膜の形成が認められたが、形成された歯根に面した部位には歯槽骨の形成が認められなかった。一方、歯小嚢に顎骨の骨膜由来成分が付着した胎生17.5日齢以降のマウス臼歯歯胚の長期間器官培養では、形成された歯根にはセメント質および歯根膜線維の形成と歯根に面した部位には骨形成が認められた。異所性骨形成を抑制するRapamycinを添加した歯胚の長期間器官培養では形成された歯胚全体の外形はやや小型化し、エナメル形成や石灰化および歯根形成が認められたが、歯胚周囲には異所性骨組織の形成は観察されなかった。この実験結果はRapamycinが骨形成を阻害する可能性を示唆していた。 歯胚の長期間器官培養の際には、培地に添加する血清の性質が重要な影響を与えるため、新規の血清を用いる際にはロットチェックが必須であるが、予定していた血清のロットチェックが当該年度におこなうことができず、次年度に繰り越す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歯胚の長期間器官培養に必須である培地に添加する従来から用いていた最適な血清の在庫が当該年度の後半に無くなり、新たに血清を更新する必要が生じた。そのために、血清のロットチェックをおこなったが、今まで用いていた血清と同程度の効果を示す血清を得ることが出来なかった。再度血清のロットチェックを計画したが、歯根形成を目的とする歯胚の器官培養には8~10週間という長期間の培養を必要とすることやコロナ感染症の第2回緊急事態宣言の発令などのため、再度の血清のロットチェックの実施計画が遅れたことにより、実際に予定していた器官培養実験のすべてを当該年度におこなうことができず、次年度に残りの培養実験を繰り越すことになった。 しかし、当該年度におこなった歯根形成の器官培養実験では、胎生18日齢の歯胚の長期間器官培養実験でも、歯周組織形成を伴う歯根形成が認められ、さらに、Rapamycin添加で異所性骨形成が抑制される結果が明らかとなり、次年度にさらに器官培養実験を重ねることにより、歯周組織、特にセメント質形成と歯槽骨分化形成に及ぼす影響を観察できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
器官歯胚歯胚における歯根の歯周組織の形成能の検索に関しては、当該年度でおこなえなかった器官培養実験を次年度に繰り越すとともに、実験数を増やし、さらに、胎生18 日齢の歯胚の長期間器官培養系にRapamycin を適用して、形成された歯根膜を含む歯周組織形成を組織学的に観察し、さらにアルカリホスファターゼ(ALP) など酵素活性を調べ、歯周組織、特に歯根膜形成の影響を検討する。 動物実験系での歯周組織の分化形成能の検索に関しては、歯周組織はセメント質、歯根膜および歯槽骨から成る複雑な組織で、培養系ではそれらの高次構造を観察するのは困難であり、動物に歯胚を移植し高次構造の形成を観察する。その際、分化した細胞の由来を明確にするために、GFPマウスを用いてGFPで標識された細胞を持つマウスの歯胚を通常マウスの皮下に移植し、歯周組織、特に歯根膜へ分化する細胞の由来を確認する。 培養系での歯周組織への分化誘導機構の検討に関しては、器官培養系にBMP,TGF-βの阻害剤を用いて歯根形成の影響を確認し、さらに異所性骨形成を阻害するRapamycin を培養系に添加して、歯根形成を観察し、骨芽細胞や歯根膜細胞に関する分化マーカーの発現をPCRや免疫組織化学で観察する。 以上の観察により、歯根形成における歯周組織特に歯根膜への分化機構を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
歯胚の長期間器官培養に必須である培地に添加する従来より使用していた最適な血清の在庫が当該年度の後半に無くなったことから、新たに血清を更新する必要が生じた。そのために、血清のロットチェックをおこなったが、今まで用いていた血清と同程度の効果を示す血清を選定することが出来なかった。再度血清のロットチェックを計画したが、血清のロットチェックの実施計画が遅れたため、血清の購入と予定していた器官培養実験を当該年までに終了することができず、次年度に残りの培養実験を繰り越すことになった。 次年度に繰り越した使用額はロットチェックで良好な培養結果を示した血清の購入と当該年度から次年度に繰り越した歯根形成の器官培養実験に必要な培地や試薬や培養器具ならびに実験動物の購入と、培養実験後の組織学的観察に必要な器具、試薬の購入に使用する。 次年度に繰り越した培養実験では主に胎生18日齢以降の歯胚の長期間器官培養実験をおこない、当該年の繰り越した培養実験と次年度に予定している培養実験と組み合わせることにより、本研究の遅れを取り戻せると考えられる。
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