申請者はすでに、人工多能性幹細胞(iPS細胞)からMSC様細胞(iPSMSLC)を作製し、さらにiPSMSLCを骨芽細胞様細胞へと分化させることに成功した。すなわち、大型の骨再建に必須となる、大量の骨芽細胞を理論上無限の細胞供給源になりうるiPS細胞から作製し、さらに局所定着細胞数の向上には移植細胞の生存を向上させる新規の移植担体であるヒトI型コラーゲン様リコンビナントペプチドを用いることにより、これまでの細胞移植の問題点を解決し、大型の骨再生を誘導する方法を見出すことを本研究課題の目的とした。 細胞の三次元培養は、二次元の平面培養に比べて、組織や臓器に類似した環境を再現することから、組織工学分野で広く研究されている。しかしながら、三次元培養では作製された組織の内部において酸素や栄養の供給不足により細胞死が生じることが知られている。我々は血管内皮細胞(EC)が形成する内皮チューブ状構造を応用することによって三次元培養時の細胞死を回避する可能性を考えた。MSCとECから成る三次元機能組織の作製を目指して、iPS細胞からMSC細胞への分化誘導法について検討した. iPS細胞からMSC細胞への分化誘導を行ったところ、培養約2週後に、間葉系幹細胞に類似した紡錘形細胞が観察された。また、この細胞を骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞へ分化誘導を行ったところ、それぞれアリザリンレッド、アルシアンブルー、オイルレッド染色に対する陽性像が観察された。また、iPS細胞からECへの分化誘導を行ったところ、培養2週後に血管内皮細胞に類似した敷石状の細胞が観察された。
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